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【サスペリア−1977−ネタバレ解説】ダリオアルジェントが仕掛けた5つの謎

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サスペリアのオリジナル版、先日初めて見ました。

『サスペリア』の超ざっくりなあらすじ

アメリカからドイツのバレエ名門校に入学したスージー。バレエ学校では、奇怪な現象が多発し、次々と人が殺されていく。スージーは学校の秘密を暴き、一連の出来事が魔女の仕業だと突き止めるのだった。

ダリオ・アルジェント監督は今作をシーンを考えてからストーリーを組み立てていったようです。

なので詳しい設定など説明がなされていない部分も多い作品なんです。

特に3人の魔女の事なんて一言も出てこない。

のちに魔女三部作という構想が明らかになりました。

という非常に不親切な作品なわけです(笑)

それゆえにいろいろ調べるのが面白いとも言えるんですがね・・・・

長年のサスペリアのファンとしては今更だとは思いますが、今回本作の5つの謎を調べてみました。

『サスペリア』5つの謎
  • 『サスペリア』のタイトルの意味
  • ジェシカ・ハーパーが抜擢された理由
  • バレエ学校の秘密
  • バレエ学校はなぜ燃えた
  • 最後にスージーが笑う理由

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まだまだいろいろ小ネタや設定裏話もあると思いますが、特にサスペリアしか見たことない方は楽しめる内容になっていると思います。

また『サスペリア』ジャッロ映画というジャンルにあたります。

ジャッロ映画についてこちらで解説しています。

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謎その1:『サスペリア』の意味は魔女の溜息

サスペリア』というタイトルは、イタリアの古語でsuspiro(溜息, 嘆き)を使った造語です。

さしずめ【魔女の溜息】といったところでしょうか。

これは18世紀イギリスの著述家トーマス・ド・クインシーによる『深き淵よりの嘆息』よりとられたもの。

サスペリア』の時代背景

公開年である1977年秋は後に「ドイツの秋」と呼ばれ、ドイツ赤軍(Rote Armee Fraktion、RAF)は刑務所に収監されているメンバーを解放するために、西ドイツ政財界の重要人物を立て続けに誘拐する事件を起こしました。

それ以前にもドイツ赤軍 (RAF)は1975年ストックホルム西ドイツ大使館占領事件や政治家ペーター・ロレンツ(Peter Lorenz)の誘拐事件を起こしました。

1970年代は西ドイツにとっては激動の時代だった訳です。

また映画公開後ですが、1977年10月にはルフトハンザ航空181便ハイジャック事件が発生しました。

ルフトハンザ航空181便ハイジャック事件(ルフトハンザこうくう181びんハイジャックじけん)とは、1977年10月13日、西ドイツのルフトハンザ航空181便(ボーイング737-200型機)がパレスチナ解放人民戦線(PFLP)のメンバー4人により乗っ取られた事件

Wikipediaより

2018年のリメイク版でドイツ赤軍は画面の中に何度も登場しているのですが、アルジェント版では一切言及されることはありません。

冒頭の空港ロケ地はミュンヘン空港で、ルフトハンザ航空とは違いますが、時期と場所がずれれば危なかったかも知れません。

しかし、時代の空気感は緊張感というような形で、反映されていると思います。

謎その2:ジェシカ・ハーパーが抜擢された理由

(c)1977 SEDA SPETTACOLI S.P.A (c)2004 CDE / VIDEA

サスペリア』は、ダリオ・アルジェントの名を一躍世界に知らしめた代表作ともいえる作品。

それまでジャッロ映画を撮ってきたアルジェントにとって今作は、初のオカルトホラー作品、新たな境地を開拓する作品でもありました。

その背景には、「エクソシスト」「オーメン」といったオカルト映画ブームがあるのは間違いないですが、最も大きな影響を与えたのは「サスペリア2」でヒロインを演じ、公私を共にする仲になっていたダリア・ニコロディの存在です。

祖母の影響でオカルトに興味を持っていたニコロディは、今作の脚本で彼女の知識やアイデアが多く盛り込まれています。

当初はヒロインのスージー役もニコロディが演じる予定でした。

ですが世界的にヒットする為には、ニコロディでは弱いのではないかと思ったダリオ・アルジェントと父でプロデューサーのサルヴァトーレ・アルジェントはロサンジェルスに向かいました。

ジェシカ・ハーパーが当時出演したのはブライアン・デ・パルマ監督の『ファントム・オブ・パラダイス』と『ウディ・アレンの愛と死

アルジェントが今作で目指していたのは、ディズニーアニメ「白雪姫」の世界

白雪姫のようにあどけない少女=汚れのない、無垢で、純粋な大きな瞳というイメージにピッタリのジェシカ・ハーパーに白羽の矢が立ったわけです。

ジェシカ・ハーパーのエージェントに打診したところ、実は彼女はもう一つの作品のオファーが来ていました。

とりあえず『サスペリア』の脚本を読んでみたところ彼女は気に入り出演が決まったそうです。

ジェシカ・ハーパーにオファーがきていた作品とは、ウディ・アレンの『アニー・ホールと言う作品。

ジェシカ・ハーパーにオファーが来ていた役は、ダイアン・キートン演じるアニー・ホールではなく、わき役だったという話ですが、もしスージージェシカ・ハーパーでなかったら・・・・今では想像つかないですよね。

このキャスティングに不満だったのがダリア・ニコロディ。「サスペリア2」でヒロインを演じダリオ・アルジェントとの間に娘のアーシアも生まれて間もない時期。

ダリア・ニコロディにはスージーの友人であるサラ役が割り当てられましたがこれを拒否し、冒頭の空港の1シーンのみにカメオ出演しています。

ちなみに、今作で少女役を演じたジェシカ・ハーパーですが、何と当時27歳だったというから驚き。


今作はジャッロ映画らしく赤や青、緑、黄などの原色カラーが使われていますが、リアルな色彩から離れる事で、おとぎ話の世界に迷い込んだような、幻想的な世界作りに成功しています。

その世界観の舞台装置として機能しているのが、スージー・バニヨンと言えるのかも知れません。

謎その3:バレエ学校に巣食う魔女エレナ・マルコス

(c)1977 SEDA SPETTACOLI S.P.A (c)2004 CDE / VIDEA

バレエ学校に巣食っていたのはエレナ・マルコス

エレナ・マルコスはマーテル・サスペリオルム(嘆きの母、または溜息の母)と呼ばれる魔女。


エレナ・マルコスは念動、幻術、不可視といった魔術を操る、三人の魔女の一人

『深き淵よりの嘆息』の中に登場するのが、「三人の母」と呼ばれる古代の神々の末裔。これをヒントにダリオ・アルジェントは三人の魔女を作りあげました。

3人の魔女が言及されるのが次作の『インフェルノ』(1980年)。

劇中ニューヨークに住む女性詩人が手にとった古書『3人の母』には、著者である建築家が「3人の母(魔女)」にそれぞれ3つの館を建てた。ひとつはドイツのベルリンで、「溜息の母」のために。もうひとつはアメリカのニューヨークで、「暗闇の母」のために。最後にイタリアのローマで、「涙の母」のためにと記されていました。

エレナ・マルコスマーテルサスピリオルム(嘆きの母)


エレナ・マルコスは3人の中でも最も古き者であるとされ、ギリシャ移民だった彼女は、人々を惑わす妖術を使ったとされ欧州諸国から追放されました。


信奉者たちからは“黒の魔女”と呼ばれ、ドイツのベルリンに移り住んだあと、バレエとオカルトを教授する学校を創設。

しかし10年しか続かず、1905年には地元住民の迫害をうけて、火事により焼死。学校は彼女の弟子である学校の優等生により再建され、バレエの名門校となった。
だが、それは世間の目を欺くための罠であり、彼女は自身の死を偽装し、その後も理事長として実質、学校を支配し続けた。

バレエ学校を再建したのは弟子ではなくエレナ・マルコス自身だったのだ。

謎その4:バレエ学校はなぜ燃えた

(c)1977 SEDA SPETTACOLI S.P.A (c)2004 CDE / VIDEA

ラストシーンでバレエ学校が燃えた理由

建物が炎に包まれたのは、一度炎で焼かれていたが魔力で生きながらえていたヘレナ・マルコスが死んだ為

と私は解釈しています。

1895年にバレエ学校(オカルトとバレエ)を創立したヘレナ・マルコス。

数年後、バレエ学校は火事になり、ヘレナも死んだ。→はずだった。

その後、表向きは普通のバレエ学校として再建されたが、裏では学校を支配し続けたヘレナ・マルコス

ラストシーンではバレエ学校自体を魔力で包み込んでいたヘレナ・マルコス宿主が死んだ為、魔力を失い学校は崩壊、ヘレナ・マルコスは一度炎に焼かれていたのを、魔力で生きながらえていた。

再び死に舞い戻り炎に包まれたんだと思います。

謎その5:【ラストシーンのスージー】笑みの論争

(c)1977 SEDA SPETTACOLI S.P.A (c)2004 CDE / VIDEA

ラストシーンでスージーが魔女の館から脱出した時、大雨の中で笑顔になって立ち去ります。

この笑みの意味について以下の論争が起きました。

スージーの笑顔の意味
  1. 魔女の館から解放された安心感。
  2. 魔女がスージーに乗り移り死んでいなかった。
  3. スージー自体が魔女だった。
  4. 特に意味はない。

こちらはダリオアルジェントが【魔女の館から解放された安心感】からと過去のインタヴューで答えています。

この含みを持たせた演出(受け手に解釈を任せる)がダリオアルジェントらしさではあるのですが、ここに着目し脚色していったのがルカ・グァダニーノのリメイク版なのが面白い。

オリジナル版『サスペリア』では、スージーはアメリカ人です。

ジョーン・ベネット扮するマダム・ブラン「あなたは自分の意志を曲げない」と言われるシーンがありました。

なんてことないセリフですが、スージーがアメリカを体現する存在とするならば、アメリカ人がヨーロッパの伝統あるバレエ学校をぶっ壊していく。

ヨーロッパの伝統のある古き思想や、概念をすべてぶっ壊していくのは、まさに当時のアメリカの勢いそのもの。

新しい時代を作るとして、アメリカがエンターテインメントでも時代を切り拓いていったみたいに。

まとめ

(c)1977 SEDA SPETTACOLI S.P.A (c)2004 CDE / VIDEA

サスペリアは スティーブンキングが選ぶ100本のホラー映画に入っています。アメリカの作品が多い中で、イタリアホラーのサスペリアが入っているのは珍しい。

そんなダリオアルジェントの代表作サスペリアの5つの謎を解説してきました。

まだまだ物足りないとは思いますが、『インフェルノ』(1980年)『サスペリア・テルザ/最後の魔女』(2007年)を見直したりリメイク版を深堀すると、まだまだこの沼は深そうですが今回はいったんこの辺で・・・

ではまた

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