映画のジャンルでジャッロ映画というものがあるのをご存じでしょうか?
そんなの知ってるよ~と言う方はこの記事は読まなくていいです(笑)
「えっ何それ?」と興味を持った方は是非読んでいってください。
私がジャッロ映画を知ったきっかけは【マリグナント 狂暴な悪夢】は『死霊館』『ソウ』シリーズ、ジェームズ・ワン監督作品でした。
【マリグナント 狂暴な悪夢】彼の集大成と言っても良い傑作でした。
こちらですね☟
【マリグナント】のレビュー記事などを読む中で【ジャッロ映画】というキーワードが出てきました。
今回、ジャッロ映画を調べることで、様々な傑作を知ることができました。
この記事ではジャッロ映画に興味を持たれた方へ
3つに絞って解説していきます。
- ジャッロ映画の要約と起源
- 有名な監督を3名紹介
- 現代の映画への影響
マニアックな内容ではないので気軽に見ていただければと思います。
【ジャッロ映画】についてざっくり知りたい方は読んでいってください
Giallo ってなんじゃろ?
そもそもジャッロはイタリア語で黄色と言う意味。
ジャッロはもとは映画ではなくアメリカでいうパルプフィクション(特にミステリー小説)を指す言葉でした。(これらの本の背表紙が黄色だったことに由来する)
そもそもイタリアでは、ミステリのことをジャッロ(Giallo)と言います。シャーロック・ホームズもアガサ・クリスティもジャッロになります(笑)
ジャッロ映画の始まりは1960年代、このジャッロ小説の映画化から始まりました。
次第にジャッロ映画の作品は増えていきジャンルとして確立していきます。
マリオ・バーヴァ監督の「知りすぎた少女」(1963年)という作品でジャッロの基本的な特徴を確立しました。
20歳のアメリカ娘ノーラは、ローマに住む叔母に会いに行くため、ローマ行きの飛行機に乗る。その機内でノーラは、偶然隣り合わせた男からタバコをもらう。だが、それは実はマリファナで、男は空港内で麻薬所持で逮捕された。
何とか難を逃れたノーラは叔母と対面するが、叔母は間もなく急死してしまう。ノーラは叔母の友人だったというラウラ夫人のもとに身を寄せる。
ある夜、ノーラは街中で女性が刺殺されるのを目撃する。だが、彼女以外に目撃者がおらず、証拠も残っていないため、幻覚として真面目に受けとってもらえない。
その後も、ノーラの周囲では殺人が次々に起きる。彼女はすべてがマリファナを吸ったことによる幻覚ではないかと疑い始めるが、空港で知り合ったマルチェロ医師の協力を得て調べを進める。
その結果、彼女が目撃した一連の殺人は、10年前に起きた連続殺人事件と全く同じ手口であることが分かる。
Wikipediaより引用
「知りすぎた少女」はのちにダリオ・アルジェント監督のサスペリア2に影響を与えたと言われてます。
主人公が犯人探し、事件を調べていく過程で、犯人に逆に狙われていくという構造。
また、ストーリーはオカルトチックではないですが、シーンの作り方が似ています。
代表的な演出として
- 水たまりや鏡に人物がうつり込むシーン
- 裸電球が揺れて影が揺れて、顔に影と光がうつり込むことによって、主人公の不安感が強調されるシーン。
- 土葬されるシーン
- 包丁で背中を刺されるシーン
- すりガラス越しに犯人が映り込むシーン。
どれもが「知りすぎた少女」とサスペリア2の両方に出てきます。
ジャッロ映画の特徴
そろそろジャッロ映画に興味湧いてきましたか(笑)
ジャッロ映画の特徴をまとめると以下の通りです。
この中でも特に印象に残る3つの特徴を例を出して解説していきます。
ジャッロ映画には色彩の使い方や不安感を煽る演出、音楽に特徴があると思います。
色彩に関してはイタリアという国が関係している
イタリアの国旗は赤と白と緑
また街並みも原色が使われることも多いです。
以上の事から原色、特に赤=血の色が印象的に使われると言えます。
不安感を煽る演出
ジャッロ映画の演出の特徴として、不安感を煽るようにカメラワークや小道具を使う場合があります。
先ほども紹介した人物の顔がうつり込むシーン
裸電球が揺れて影が揺れて、顔に影と光がうつり込むシーン
これらの表現は現代の映画やドラマでも見かける演出かと思います。
異質の音楽
音楽に関してはダリオ・アルジェント の功績が大きいでしょう。
自身の『サスペリア』においてイタリアのプログレバンドのゴブリン(Goblin)を向かえ入れたのは大正解でした。
映画「エクソシスト」のテーマのように美しいけど不気味……ですが中盤からプログレバンドらしい展開になるのは非常にかっこいい!!
バンドのゴブリン(Goblin)がイタリアってとこもいいですよね。
とは言え冒頭の部分を聴きながら街灯の少ない夜道を一人で歩いていると……誰かに後をつけられている妄想が膨らんでゾクッとしてたまりません。
「エクソシスト」のテーマはマイク・オールドフィールド(Mike Oldfield)という方の『チューブラー・ベルズ』というアルバムのチューブラー・ベルズ (パート1)のイントロが使われています。
1973年5月、リチャード・ブランソンが主宰する新興レーベル、ヴァージン・レコードの第一弾アーティストとして、アルバム『チューブラー・ベルズ』でデビュー。2400回もの多重録音を繰り返して制作されたこの壮大なアルバムは全英1位を記録。別人の演奏となったが、特徴あるイントロのフレーズがアメリカ映画『エクソシスト』(1974年)に使用され、さらに知名度が上がった[1]。
Wikipediaより引用
ジャッロ映画の中で特に有名な監督
ジャッロ映画の中で特に有名な監督として3名紹介します。
ダリオ・アルジェント (Dario Argento)
生年月日: 1940年9月7日
ダリオ・アルジェントはジャッロ映画を広めた人物。
ジャッロ映画で真っ先に挙げられるのが『サスペリア』ではないでしょうか。
【関連記事】『サスペリア』に仕掛けられた5つの謎を解説
余談ですが2019年にリメイク版も作られました。
こちらはリメイクというより再構築版と言われ、上映時間もオリジナル99分➡152分に拡大されています。
ダリオ・アルジェント には代表作が多くありますし人気監督です。
『サスペリア』から続く魔女三部作や『インフェルノ』
特に『オペラ座/血の喝采』はトラウマ必須です(笑)
恐怖と美を組み合わせた演出で、イタリアホラー映画界のアイコンとしての地位を確立しています。
ダリオ・アルジェントのオリジナル版
マリオ・バーヴァ (Mario Bava)
生年月日: 1914年7月31日 – 1980年4月25日
マリオ・バーヴァはジャッロ映画、ひいてはホラー映画の基礎を作ったともいえる人物。
代表作のひとつ『呪いの館』は日本のホラー作品にも影響を与えていますし、マーティン・スコセッシ監督曰く、本作がバーヴァ監督の最高傑作とも答えています。
マリオ・バーヴァは独創性という意味で他にいない監督と言えます。
『呪いの館』は江戸川乱歩的な怪奇なストーリー、ミステリーとホラーの良いとこ取りをした楽しさ。またロケ地はイタリア・ローマの北方に位置するカルカータという街。
カルカータは「天空の城ラピュタ」のモデルになっただけあって、街並みが素晴らしいです。
もう一作紹介したいのが
『血みどろの入江』=A Bay of Blood→直訳やん・・
何とも物騒なタイトルのこの作品は71年制作、バーヴァ監督作品としては後期の作品。
何者かに登場人物が次々と無残に殺されるという筋書きの、スラッシャー映画の原型であり「13日の金曜日」の元ネタなのは有名な話。
顔面に食い込む斧や、若いカップルが行為の最中に殺されたり、ホラーを見慣れた方にはインパクトはないかも知れません。
殺され方、殺し方に趣向をこらすのがジャーロ映画の肝ですが、これを受け継いだのがジェイソンやレザーフェイスという。
元祖ともいえる『悪魔のいけにえ』(原題: The Texas Chain Saw Massacre)でさえ、1974年制作
またマリオ・バーヴァは死体の見せ方も印象的。ボートを覆っていた布をめくると現れる、タコの吸い付いた水死体などは思わず拍手したくなります。
美しい海辺を望む豪邸で老伯爵夫人が自殺を装って殺害され、犯人である夫も何者かに襲われて行方不明となった。夫人が残した莫大な遺産“湾の所有権”を巡り、娘のレナータら、親族や関係者たちが入江に集まっ てくる。だが、彼らは一人、また一人と姿なき殺人者の手にかかり、無残な最期を遂げてゆく。血の殺戮を繰り返す犯人は誰なのか?そして、不気味な死の静寂のなかで遺産を手にする者とは―。
Amazonより引用
ルチオ・フルチ (Lucio Fulci)
生年月日: 1927年6月17日 – 1996年3月13日
ルチオ・フルチはマスター・オブ・ゴアと言われ、ジャッロ映画というよりゴア表現で有名な監督です。
代表作は『サンゲリア』『地獄の門』などです。
初めに行っておきますがこの2作はジャッロ映画ではありません。
ルチオ・フルチにおけるジャッロ映画は『幻想殺人』『マッキラー』です。
その他にもマカロニウエスタンやコメディ作品を撮ったりと多才ではありましたが、評価されず・・
そんな中ほぼ無名に近い彼をメジャーに押し上げたのが『サンゲリア』
『サンゲリア』でのゴア表現が受け要られ、知名度が上がりました。転換期と言っても良い作品です。
ゴア表現については割愛しますが、例えばジョージ・A・ロメロのゾンビは見た目がキレイだったりするのですが『サンゲリア』のゾンビは腐乱していたり、虫がついていたりと嫌悪感をおぼえる方も多いと思います
一方『幻想殺人』『マッキラー』はゴア表現もあるものの正統派ジャッロ映画と言えると思います。
『マッキラー』のあらすじ
イタリアのど田舎農村で起きた、少年のみを狙った不気味な連続殺人事件。容疑者として真っ先に疑いの目が向けられたのは、呪術を使う噂される女「マッキラー」だった。進展を見せない警察の捜査に対し被害者遺族は、彼女を集団リンチにかけるのだが、真犯人は他に…
閉鎖された村や集団心理、疑心暗鬼になる恐ろしさなどサスペンス要素が強い作品
『幻想殺人』のあらすじ
ある日主人公キャロルは隣に住む美女・ジュリアを殺害する夢をみました。精神科医にそのことを話すと「奔放になりたい気持ちが奥底にあるが夢の中で彼女を殺すことで良心のバランスをとっているなどと分析されます。しかし数日後、本当に隣家のジュリアが殺される事件が発生。現場からはキャロルの私物が発見され警察は彼女に疑いの目を向けます。
「夢の中で体験した殺人が現実でも起こる」という謎を軸に、様々な人間関係が絡み合うという作品。
現代ホラー映画への系譜
ジャッロ映画の面白さは、監督ごとに異なるビジュアルや音楽が独特の雰囲気を作っていると言えます。
ジャッロ映画の全盛期は1960年代1970年代。
とは言え『マリグナント 狂暴な悪夢』や『ラストナイト・イン・ソーホー』など現代ホラーに確実にうけつがれれています。
現代ホラーにおいて、ジャッロ映画を意識している作品=意識して作られている作品はそれほどはないにせよ、ぽいな~というシーンは様々な作品に観られます。
ジャッロ映画を一言でいうならホラー映画の礎を作ったと言えるのではないでしょうか。
ダリオ・アルジェントの新作ジャッロ映画を無料でみるなら
少し前の作品ではありますがダリオ・アルジェントの新作として『ダークグラス』が公開されました。
ダリオ・アルジェントは2023年の時点で83歳ですが、新作とあらば無条件で見る他ないでしょう(笑)
まとめ
この記事ではジャッロ映画の入門ということで以下の3つを解説してきました。
- ジャッロ映画の要約と起源
- 有名な監督を3名紹介
- 現代の映画への影響
実際私自身『マリグナント 狂暴な悪夢』や『ラストナイト・イン・ソーホー』を見た時点ではジャッロ映画という言葉も知りませんでした。
ジャッロ映画はジャンルというより、定義に近い。ホラー映画を遡っていくとジャッロ映画に突き当たる。ひも解いていくと面白いんではないかと思います。
ただ、少し古い作品も多いため、配信では見れない作品も多いのが残念ですが、そこはBlu-ray化もしているので手に取つて欲しいと思います。
ではまた。
Comments