サスペリア(1977年)は以前から知っていたもの、のなかなか手を付けていなかった作品。
小学生の少年にはジャケットのインパクトが強すぎて・・・
このジャケットで小学生で見たいと思いますか(笑)
結局、今まで観ずにきましたが、改めてみるきっかけになった作品が、
【マリグナント 狂暴な悪夢】です。
【マリグナント 狂暴な悪夢】からジャッロ映画を知り、『サスペリア』にたどり着いたのです。
前置きが長くなりましたが、サスペリアはダリオ・アルジェントの魔女三部作として知られています。
- 『サスペリア』(1977年)
- 『インフェルノ』(1980年)
- 『サスペリア・テルザ/最後の魔女』(2007年)
ちなみにサスペリア(1977年)を調べるとサスペリアPART2(1975年)も出てくるのですが・・・
サスペリアPART2(1975年)はサスペリア(1977年)とは全く無関係なのに、配給会社がなぜか続編として売り出されてしまいました。しかもサスペリアより前に制作されたジャッロ映画
サスペリア(1977年)は名作と言われていますし、見逃していた方やそもそも今作を知らない方もいるかも知れません
この記事ではサスペリア(1977年)を知っているけどまだ見ていない、知らなかった・・・と言う方へ向けた内容となっています。
これを読むことでサスペリア(1977年)が絶対見たくなります・・たぶん・・・
『決して一人では見ないでください』のキャッチコピーは有名ですが私はもちろん一人で見ました。
そりゃ~ 一人で見るよ! だって友達いないもん(笑)
現在『サスペリア』は以下のサブスクで見ることが出来ます。
サスペリアのあらすじ
ドイツのバレエ名門校に入学したスージー。
バレエ学校では、奇怪な現象が多発し、次々と人が殺されていく。スージーは学校の秘密を暴き、一連の出来事が魔女の仕業だと突き止めるのだった。
超ざっくりなあらすじです。
あらすじと関係ありませんが、当時日本では以下のユニークなキャンペーンが流行りました。
日本でも「決して、ひとりでは見ないでください」というキャッチフレーズと、あまりにも激烈な恐怖・残酷表現のため、もし映画館で鑑賞してショック死した場合1000万円を支払うという「ショック死保険」をつけ大ヒットした。また、『8時だョ!全員集合』で、志村けんがいかりや長介を指して「決して、ひとりでは見ないでください」というコントを披露している。
Wikipediaより引用
実際この保険が適用されることはなかったようです。
オカルト作品に初めて挑んだダリオアルジェント
イタリアを代表するホラー映画の巨匠、ダリオ・アルジェントは今でこそ魔女や悪魔など黒魔術的な題材も多い印象がありますが、意外なことにこの『サスペリア』が初めてのオカルト・ホラー作品。
前作はサスペリアPART2(Profondo Rosso)でサスペンス映画→これはこれで面白い。日本では『サスペリア』で知名度が上がったため過去作をサスペリアPART2として売り出しちゃったんです。
サスペリアPART2は当時のジャッロ映画としてヒットしました。
ジャッロ映画の特徴は
- 過度の流血➡リアルな血の赤と言うより、作り物とわかる色
- 赤、緑、青のネオンを使う美術➡ラストナイト・イン・ソーホーに影響
- 不安感を煽る演出
- 複雑なストーリーと謎解き要素
- 異質の音楽➡ロック
- 狂気 被害妄想をはらんだ犯人像
ジャッロ映画はビジュアル面が先行してしまいますが、根っこにあるのは謎解き要素。つまり良質なサスペンス推理モノなんです
ダリオ・アルジェントの『歓びの毒』(70)も、続く『四匹の蠅』(71)も、猟奇的連続殺人事件の犯人を主人公が追いかけるストーリー。
当時はヒットが見込める為、イタリアで爆発的につくられたジャッロ映画。
アルジェントはジャッロ映画でヒットを飛ばしていたものの、それに甘えずは新しい方向性を見つけるため悩んでいました。H.P.ラヴクラフトの小説をもとに、アメリカで映画を撮る計画もあったとか・・・・
そんな彼にヒントを指し示したのが、『サスペリア』の共同脚本家のダリア・ニコロディでした。
ダリア・ニコロディの祖母の話にインスパイア
ダリア・ニコロディは『歓びの毒』(70)を観てアルジェントの才能に惚れ込み、オーディンに受かりサスペリアPART2に出演。
のちにダリオ・アルジェントとは公私にわたるパートナー関係を続け、女優のアーシア・アルジェントをもうけました。
ダリオはもともと推理映画を得意とする監督であり、ダリアとの初の監督・主演コンビ作『サスペリアPART2』もこの分野に属するが、オカルトに造詣の深かった彼女は彼の次回作として『サスペリア』を企画した。出演はカメオのみだが脚本もダリオと共同執筆。
Wikipediaより
当時の映画界は、『エクソシスト』(73)や『オーメン』(76)など空前のオカルト・ブーム。
オカルトに人一倍興味のあったダリア・ニコロディはダリオ・アルジェントと脚本を共同執筆。世界的大ヒットに結びつけ、その後もダリオ・アルジェントがホラーの帝王と呼ばれるまで多大な貢献をしました。
ダリア・ニコロディの発想の源
ダリア・ニコロディのイヴォンヌ・ミュラー(祖母)は、ダリア・ニコロディの祖母であり、ピアニストであったとされています。
彼女は若い頃にドイツの芸術学校に留学し、そこで神秘思想家ルドルフ・シュタイナーの創設した学校に通っていたとされています。
その学校では黒魔術が推奨されており、イヴォンヌ・ミュラー(祖母)怖くなって逃げ帰ったとされています。また、イヴォンヌは千里眼の持ち主であり、ダリアに白魔術の知識を伝えたとされています。
「サスペリア』制作時ダリア・ニコロディとダリオ・アルジェントはイヴォンヌ・ミュラー(祖母)が通った学校を訪ねました。
生徒に案内させて学内を見学し、外に出ると、玄関のところで銀の握りの杖を持った背の高い女性が現れ、声をかけてきました。
「ニコロディさん、お祖母様はお元気?・・・」
自分たちの素性を一切明かしていなかった二人は気が動転し、その場から逃げるように立ち去りました。
またダリアの祖母イヴォンヌは、映画が公開された1977年に亡くなりました。
ダリア・ニコロディは、祖母との話から ごく自然にオカルトや怪奇・幻想文学に興味を抱く 不思議少女になって行きました。
その影響でオカルトに傾倒し、H.P.ラヴクラフトの著作を全て読破するなど、より一層造形を深めていきました。もしかして、ダリオ・アルジェントとの出会いも、自然の流れだったかも知れません。
『白雪姫』からインスパイアされた色彩設計
『サスペリア』の特徴のもう一つは、赤 緑 緑のライトと鮮やかな色彩設計。
ダリオ・アルジェントは、オカルト作品を初めて手がけるにあたり、ディズニー・アニメ『白雪姫』(37)を参考にしたとのこと。
光の三原色(赤、青、緑)が印象的なこの作品は、当時ほとんど使われなくなっていたコダックのフィルムをわざわざ中国から取り寄せて、撮影に臨みました。
低感度のフィルムのため照明が大量に必要でしたが、出来上がった映像は独特で幻想的なアート・フィルムのような色彩になっています。
実は『サスペリア』はホラー界の『白雪姫』「オズの魔法使い」や「不思議の国のアリス」などのおとぎ話と言っても良いです。
作品内で赤色は象徴的な色として、血、バレエ学校の外壁や内装、赤ワインなど多くの場面で使われています。
魅了されずにいられない演出
『サスペリア』には」「何が何だかわからないが、魅了されずにいられない演出」があちこちに盛り込まれています。
冒頭ゴブリンの大音量のテーマ曲からの空港シーン。一旦静かになりますが、自動ドアを映すと音楽が流れ、スージーに切り替わると音楽が消える。
また当時、タクシーのシーンで霊がうつり込んでいるのではという噂が流れました。
最初にスージーがタクシーに乗り、運転手に行き先を伝えるシーンで、雷光に照らされた車内隔壁ガラスの運転手の首元に一瞬、叫ぶような青い顔が映る。これはアルジェント本人が意図した演出(実際にアルジェント本人がこれを演じている)ではあるものの、日本では当時、本物の幽霊が映っていると話題となり、たびたび心霊・怪奇番組で映画に映ってしまった怪奇現象として紹介された。
Wikipediaより
そもそもダリオ・アルジェントの意図した演出であれば、大成功のシーン。
外に出てタクシーに乗ってからも流れ続ける音楽と、不自然な赤、緑、黄のネオンと影の揺らめきやガラスに映る人物。
バレエ学校に着くまでのシーンの冒頭だけで心が揺さぶられるのは、アルジェントの功績であり現代のジェームズ・ワンに受け継がれています。
そして冒頭のインパクトのあるシーン
現代ホラーと比べ血の色が赤と言うより朱色ですが、内装と相まってむしろ幻想的。
☝「バレエ学校の構内の色に合わせたのか?」と思うような色で嫌悪感ではなくむしろアートと思える色彩。
盲目のピアニスト、ダニエルが愛犬のシェパードに噛み殺されるシーン。
真夜中の広場を引きのショットで映す空間演出や、カメラをワイヤーで吊して上空から急接近するのショットには思わず目を見張るものがあります。
恐怖の対象を実物(例えば幽霊など)ではなるべく見せず、カメラワークや照明でアイデアを絞って演出する方法は実物より効果的と言えます。
このシーンはドイツのミュンヘン国立劇場の前広場で撮影されました。
主人公スージーとルームメイトのサラが学校内のプールで会話するシーン。
何も起こらないというのに、不意に挿入される2階からの俯瞰ショット。
無防備な水着姿でゆらゆらと水中で立ち泳ぎしているスージーたちを、何かが狙っている。または魔術で別の場所から見られているような生々しい感覚がわき起こってくきます。
結局何も起きないけど・・・
ジェシカ・ハーパーに夢中になる
主人公のスージー役は、当初はダリア・ニコロディが演じる予定でしたが、アメリカへの売り込みを考え、アメリカ人女優のジェシカ・ハーパーが起用されることになりました。
もともと『サスペリア』は、10歳から12歳くらいの少女たちの物語として書かれていました。しかし脚本を読んだ映画の出資者たちから、真っ向から反対されてしまう。そこでバレエ学校の生徒たちの年齢を20歳くらいに引き上げることになりました。
しかし年齢が上がったにも関わらず脚本は書き直されず、生徒たちのセリフが年齢の割に幼稚に聞こえるのは、その名残りです。
ダリオ・アルジェントは『サスペリア』で、あどけない少女たちが惨劇に巻き込まれる物語を描きたかった。
あどけない少女=汚れのない、無垢で、純粋な大きな瞳、童顔で華奢なジェシカ・ハーパーの起用となったわけです。
ラストシーンの笑顔だけでもこの映画の価値は十分な破壊力。
も~可愛すぎ!
【魔女が焚火を焚くと大雨が降る】(まとめ)
【魔女が焚火を焚くと大雨が降る】
えっそうなの?
と思った方へ
「わかります」私も今回初めて知りました。
冒頭と最後の大雨が印象的な作品ですが、実はそういう意味があったんですね~
実際ラストシーンは学校が燃えていました(笑)
『サスペリア』はダリオ・アルジェント監督の美学の詰まった作品。
なんといっても独特なビジュアル・センスに尽きるのではないかと思います。殺人シーンでさえ美しい演出はいまだにファンの心をつかんで離しません。
またダリオ・アルジェントのパートナーダリア・ニコロディの祖母イヴォンヌ・ミュラーの逸話も興味深いです。
私は【マリグナント 狂暴な悪夢】がジャッロ映画➡『サスペリア』と見る入口になりましたが、映画好きなら一度は見ていただきたい作品です。
だ か ら ・・・
一人で見るよ! だって友達いないもん(笑)
ではまた
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