この記事では、ライブで盛り上がる人気の曲『Dani California』を掘り下げます。
『Dani California』は日本の映画『デスノート』に主題歌として流れました。
少年ジャンプの作品の映像化は、当時アニメが主流。『デスノート』は今でこそ認知度のある作品ですが・・・センセーショナルな打ち出しをしたかったので・・・そのために選択したのが「洋楽」でした。
ワーナーミュージックの方から「イメージ違うかもしれませんが、レッチリは興味ありますか?」と話がありました。
ボーカルのアンソニー・キーディスが日本の漫画が好きで、『デスノート』の存在は知りませんでしたが、英語版を読んでもらったところ「これはクールだね」と。ベースのフリーは日本が大好きらしく、「日本の文化はすばらしい」「俺はいつも京都に行くんだ」みたいなことを言っていました。
マイナビニュース『海外大物アーティストが主題歌を提供した真相』より引用
2006年に来日した際、Mステでも演奏されたのは記憶に残っています。
東京ドーム公演の前日だった気がします。➡懐かしいと思った方は同年代かもしれませんね(笑)
歌詞の解釈は人それぞれですし、本当の意味は作詞をした人しか分かりません。
洋楽は特に「曲は好きだけど、意味はよく知らない」「知ってはいるんだけど」という方も多いです。私も以前はそうでした。
しかし、アンソニーの書く歌詞は意味が深く、哲学的な歌詞も多いのが魅力です。
ぜひ『Dani California』を聴きながら記事を読んでみてくださいね。
題して『Dani California』は音楽史に対してのレクイエム
もしよかったら一つの解釈として読んで頂けると嬉しいです。
レッチリの歌詞の【和訳と深堀り】新記事はこちらから
『Dani California』lyric

[Verse 1]
Gettin’ born in the state of Mississippi
Poppa was a copper and her momma was a hippie
In Alabama, she would swing a hammer
Price you gotta pay when you break the panorama
[Pre-Chorus]
She never knew that there was anything more than poor
What in the world does your company take me for?
[Verse 2]
Black bandana, sweet Louisiana
Robbin’ a bank in the state of Indiana
She’s a runner, rebel and a stunner
On her merry way sayin’, “Baby, what you gonna?”
[Pre-Chorus]
Lookin’ down the barrel of a hot metal .45
Just another way to survive
[Chorus]
California, rest in peace
Simultaneous release
California, show your teeth
She’s my priestess, I’m your priest, yeah, yeah
[Verse 3]
She’s a lover, baby and a fighter
Shoulda seen her comin’ when it got a little brighter
With a name like Dani California
Day was gonna come when I was gonna mourn ya
[Pre-Chorus]
A little loaded, she was stealin’ another breath
I love my baby to death
[Chorus]
California, rest in peace
Simultaneous release
California, show your teeth
She’s my priestess, I’m your priest, yeah, yeah
[Bridge]
Who knew the other side of you?
Who knew what others died to prove?
Too true to say goodbye to you
Too true to say, say, say
[Verse 4]
Push the fader, gifted animator
One for the now and eleven for the later
Never made it up to Minnesota
North Dakota man was a-gunnin’ for the quota
[Pre-Chorus]
Down in the Badlands, she was savin’ the best for last
It only hurts when I laugh
Gone too fast
[Chorus]
California, rest in peace
Simultaneous release
California, show your teeth
She’s my priestess, I’m your priest, yeah, yeah
California, rest in peace (Do svidaniya)
Simultaneous release (California)
California, show your teeth (Do svidaniya)
She’s my priestess, I’m your priest, yeah, yeah
[Guitar Solo ]
『Dani California』歌詞の和訳

[Verse 1]
生れはミシシッピ
パパは警官で ママはヒッピー
アラバマでは、刑務作業
景観を壊すなら 代償を払わせないと
[Pre-Chorus]
彼女は貧しさ以上の暮らしを知らなかった
この世界であんたの仲間たちは俺たちをどうするつもりだ?
[Verse 2]
黒いバンダナ、美しいルイジアナ
インディアナ州で銀行強盗
彼女は使い走り、反逆者であり、そして美女
浮かれてこう言う「ベイビー、どうする?」
[Pre-Chorus]
熱くなった45口径の銃身を見下ろし
「これも生きる方法さ」と・・
[Chorus]
カリフォルニアよ 安らかに眠れ
そして同時に開放するんだ
カリフォルニアよ、敵意をむき出しにしてみろ
彼女は俺を導き、そして俺はお前を導く
[Verse 3]
彼女は美しくも未熟なファイター
俺はもう少し利口になって気付くべきだった
ダニーカリフォルニアって名前の
彼女を弔う日が来るはずだった
[Pre-Chorus]
少し落ち着いたら 彼女は息を吸い込む
ベイビー 死ぬほどあなたを愛している
[Chorus]
カリフォルニアよ 安らかに眠れ
そして同時に開放するんだ
カリフォルニアよ、敵意をむき出しにしてみろ
彼女は俺を導き、そして俺はお前を導く
[Bridge]
誰が君の裏の顔を知ってる?
暴こうとして死んだ者がいたことを知ってる?
真実を闇に葬ろう
そうそれが真実になるから
[Verse 4]
フェーダーを上げな 天才アニメーターさん
ここで1つ上げて 残り11回はそのまま
ミネソタ州にたどり着くことはできなかった
ノースダコタ州の男が、持ち場を守るために撃ったから
[Pre-Chorus]
バッドランズに倒れたのは、彼女の最後で最高の幕引きだった
ただ笑うたびに棘が深くささるんだ
彼女は早く逝きすぎた
[Chorus]
カリフォルニアよ 安らかに眠れ
そして同時に開放するんだ
カリフォルニアよ、敵意をむき出しにしてみろ
彼女は俺を導き、そして俺はお前を導く
カリフォルニアよ、安らかに眠れ (さよなら)
そして同時に開放するんだ (カリフォルニア)
カリフォルニアよ 敵意をむき出しにしてみろ (さよなら)
彼女は俺を導き、そして俺はお前を導く
[Guitar Solo ]
【Dani】というアウトローの物語

『Dani California』は彼らのホーム「カリフォルニア」に捧げられた曲と言えますが、歌詞の中には一人の主人公【Dani】が登場します。
【Dani】はレッチリファンの間では有名な登場人物です→【Dani】は架空の人物だがモデルがいる
架空の人物【Dani】とは?
歌詞に登場する【Dani】は3つの楽曲に登場します。
別記事では『By The Way』の歌詞も深堀りしています。
『Dani California』の彼女は、貧しい南部生まれ、人生でもがきながらノースダコタに行き着き、若くして亡くなってしまったという設定です。
アンソニーのインタビューで、「Daniは特定の人物ではなく、彼が人生で関わってきた女性たちの集合体である」というコメントを残しています。
※一説にはNirvana:ボーカル&ギターのKurt Cobainがモデルだったという説もある
【Dani】の人生は南部の底辺から始まる
[Verse 1]では彼女の生立ちと家庭環境が説明されます。
【Dani】が生れたミシシッピ州は、農業が主力で貧困率も高い地域。
加えて父親は警官、母はヒッピーという最悪な環境。
ファッションや音楽の趣味が個性的で、自然が大好き。穏やかな印象で、ラブ&ピース!
その反面、思春期の両親への反抗、破天荒というマイナスのイメージもあります。
※曲の中の彼女は後者のマイナスのイメージが強いと思います。
ヒッピーの本質は”Power to the People”
個人の手に力を取り戻し、自力で暮らしを建て直し、 個人個人のネットワークにより社会変革を目指すことが思想の根幹でありヒッピー・ムーブメントの本質でした。
コミューン(共同生活)を通して、身のまわりから世界を変えることができると信じた人々がヒッピーです。
古着屋JAM さんのブログより引用
破天荒な両親のもとに生まれ、貧しい地域出身という底辺に属す【Dani】が、簡単にまっとうな人生を歩めるはずもありません。
アラバマでは、刑務所に入りながらも、人生の自ら切り拓くために必死で働いています。

これはアメリカの格差の現実を表しており、良い悪いではなく今もなお起きている現実です。
歌詞の中でも
といわゆる労働者(雇われる側)と雇う側(成功者)の対比を描いています。
※これはどちらが偉いとか言う話ではなく、世の中の成り立ちについて嘆いています
【Dani】を無数に生んでしまう社会
やがて彼女は生きる為と、犯罪に手を染めてしまいます。
【Dani】は一度犯罪に手を染めた犯罪者
一般的に犯罪者=悪い人間かもしれません
彼女は良い側面も持っていますが、一度犯罪者のレッテルを貼られると、世間が嫌悪感を向けるのは仕方ないかもしれません。
しかし、【Dani】を知っているであろう、アンソニーは、誰か1人でも彼女の良い面に気づいてあげることが必要だと言っているのです。
結局、彼女は生き方を変えることは出来ませんでした。
彼女がしてきたことは、良い行いではないです。
《環境を変えること》は本人次第と言われればそれまでですが、彼女を取り巻く環境や社会自体がよくなかったという見方もできます。
【Dani】はカリフォルニアにはたどり着いていない

ミシシッピ →ルイジアナ→インディアナ→ノースダコタ州と転々としてしていった【Dani】は
とあります。
そう悲しいことに彼女はカリフォルニアにはたどり着いていないていないんです→恐らく・・・
もう、彼女を救うことはできません。魂は永遠に彷徨い続けるかもしれません・・・・
「カリフォルニアよ 安らかに眠れ」
「そして同時に開放するんだ」
アンソニーは無数の夢、希望と魂を救済する場所として、カルフォルニアがあると言っているのです
若くして散った【Dani】の悲劇
「バッドランズに倒れたのは、彼女の最後で最高の幕引きだった」
「ただ笑うたびに棘が深くささるんだ」
「彼女は早く逝きすぎた」
このバッドランズとは?
アメリカ合衆国サウス・ダコタ州南西部,ブラック・ヒルズの東に,5000km2にわたって広がる地域。
乾燥した気候のもとで,断続的な豪雨と流水の浸食により,急崖と複雑な谷が形成された。
植物は生育せず,農地として利用できない土地であり,通行も困難な地形なので,白人開拓者が〈バッドランズ(悪地地形)〉と名づけた。
コトバンクより出典
歌詞の中ではノースダコタ州と言及されますが、一定の場所を指すのではなく”とても人が暮らせる境遇”ではないという比喩かもしれません。
「フェーダー」が示す【Dani】の人生

一般的にはフェーダーとは、DJミキサーや映像作品の音量を調節するつまみの事です。
ですが、ここでフェーダーを操作しているのは創造主であり、私たちの人生が誰かに作られたとすれば人生を操作する存在であると言えます。
【Dani】の人生を盛り上げるのは今だ!
【Dani】の人生の節目が来たと判断したからこそ、彼は「フェーダーを上げな」とアンソニーは言っているのです。
「残り11回はそのまま」というのは、【Dani】を殺した後に男の銃に残った弾丸の数を指しています。
この弾丸の数は、これから起きたかもしれない【Dani】にとっての人生の転機の数を、表しているかもしれません
『カリフォルニアよ 安らかに眠れ』

『Dani California』においてのカリフォルニアには何が込められているのでしょうか?
私が考えたのはカリフォルニア=夢と希望の地
『Dani California』は夢途絶えた無数の【Dani】 へのレクイエムなんです。
【Dani】は破天荒な両親のもとに生まれ、貧しい地域出身。彼女はそこから抜け出そうともがきましたが、そこへたどり着くことは出来ずに逝ってしまいました。
カリフォルニアは物理的な場所ではなく、精神的な安息の地という意味
世界の貧富の差はますます開いています。
【Dani】のように生まれたときから貧しく、でも良くなろうと希望を捨てずもがいた。しかし、抜け出すことは出来ず、犯罪に手を染めてしまった無数の【Dani】
カリフォルニアは今も昔も彼女らの希望や未来、そして絶望すべてが眠る場所なんです。

カリフォルニアよ 安らかに眠れ
そして同時に開放するんだ
カリフォルニアよ、敵意をむき出しにしてみろ
彼女は俺を導き、そして俺はお前を導く
アンソニーは【Dani】と同じような最悪の状態から、運よく今の成功を掴むことが出来ました。ですが一歩間違えれば【Dani】と同じように環境から抜け出すことが出来なかった人生もあるかもしれない。
「彼女たちを責めるよりレクイエムを送りたい」と・・・
カルフォルニア=安息の地
一般的なアメリカに暮らす人々にとって、カルフォルニアとはどんな場所なのでしょうか
- アメリカで1番人口の多い州
- カルフォルニアの太陽への憧れと温暖な気候
- エンターテインメントの中心ハリウッド。
ではなく
多くのアメリカ人にとって、カルフォルニアが夢の叶う約束の地という存在としてあるのではないでしょうか。

『Dani California』の他にも、タイトルにカルフォルニアが付く有名な曲に『California Dreamin』ママス&パパス (1965)があります。
寒い地域に住んでいる主人公が、温かい楽園、カルフォルニアに憧れるという内容であります。
ですが、深堀りすると1960年~1965年はアメリカの公民権運動のさなか。
つまり冬の時代なんですね。
『California Dreamin』のメロディーが物悲しいのは、この時代の不安を表していると思うんです。
逆に考えると、昔からアメリカ人にとっての希望=カルフォルニアというイメージが強いと思うんです。
今作の【Dani】も例にもれず、カルフォルニアに対してそのような憧れがあったのでしょう。
盗作?『Dani California』×Tom Petty

『Dani California』はシンプルで力強い曲ですが、実は盗作疑惑がありました。
それはギターリフや構成が、
Tom Pettyの”Mary Jane’s Last Dance“に似ているという点でした。
Tom Pettyは1973年デビューでありレッチリの先輩に当たる大御所ロックミュージシャンです。
いかがでしょうか?
確かにリズムやリフも似ていると言えば似てる。
実はコード進行も似ており、違うコードはひとつだけです。
『Dani California』のコード進行は「Am → G → Dm → Am」
一方『Mary Jane’s Last Dance』は「Am → G → D → Am」
普通、コード進行が似ていても雰囲気はあまり似ないものなんです。
それはアレンジやテンポやサウンドが違えば、曲の印象はガラッと変わるものだからです。
ですが、この両曲のギターリフは、どちらも最初の一拍目で低音弦を二度弾いてから二拍目で一気に高音弦までストロークするという弾き方。
テンポも同じくらいで、ドラムパターンも似ている。
しかも、この両曲のプロデューサーはどちらもRick Rubin。
むしろ似せてきたのでは・・・(笑)
Tom Pettyはこのことについて、ローリングストーン誌のインタビューで、「これは悪意のある盗作だとは思ってないよ。それにたくさんのロックソングは似たり寄ったりさ。Chunk Berryに聞いてみなよ。」
と、あっけないコメントを残していました。
MV徹底考察

この曲はMVも話題を呼びました。
レッチリのメンバーがロック史の著名なバンドやジャンルを順々に装っていくのです。
日本でもアメリカでも、あの衣装の元ネタは?
などと議論があったようです。
「俺たちは主として時代を装っていて、実際の人々でない場合もある。ロカビリー、ブリティッシュ、サイケ、ファンク、グラム、パンク、ゴス、メタル、グランジ、そして自分たち、とうい具合だ」とコメントしています。 Flea
と、ここまでは一般的な解釈ですが、私はもう一つ解釈を加えます。
それは音楽の歴史に対してのレクイエム
レッチリの音楽に限らず、現代の音楽は過去の膨大な音楽の歴史の上に成り立っています。
過去の音楽がなければ、音楽が今の形にはなっていなかったでしょうし、Chunk Berryがいなければロックンロールという言葉も生まれなかったかもしれません。
そして、今ある現代の音楽がなければ、未来の音楽は違う形になっていくことでしょう。
音楽に限らず映画やファッションや芸術など、すべての歴史や文化の対しての敬意を込めたMVなのだと思います。もちろんそれは『Dani California』という曲自体にも言えることです。
ロウソクを消すカート・コバーン
MVでは50年代のロカビリーから年代が進んでいきますが、90年代のグランジシーンではNirvanaのカート・コバーンの死と対比するように、ろうそくの火が消える演出が印象的です。
※フリーとカートは、生前に親交があった間柄であり、度々Nirvanaのライブに特別ゲストとして招待されていた。アンソニーもまた生前カートと親交がありNirvanaの楽曲や彼の人柄についてのコメントを自身の自伝などで何度もしています。

ろうそくの火が消えるシーンでは、
「Gone too fast…(早く逝きすぎた…)」
というKurt Cobainの死とリンクしており、Nirvanaのファンから故人に対して侮辱的だと批判があったようです。
このことに対しNirvanaの元ドラマーであり、現Foo FightersのボーカリストDave Grohlから「侮辱には当たらない」として、レッチリのMVを擁護するコメントを出し、事態は収束したようです。
散々歌詞の事を語ってきましたが、MVだけ見ると【Dani】のモデルは、やはりKurt Cobainではないかとも思えてきます。
というわけでMVを見ても、『Dani California』はレクイエムだなと思います。
最後のギターソロのオマージュ
この曲の最後のギターソロにも秘密があります。
最後のギターソロはJimi Hendrixの『Purple Haze』のリフをモチーフにしています。
ジョンのソロでは、Keyを1音下げ、さらに4つめの音を変えています。4つめの音を変えることで、より感傷的な旋律になっていると思います。
ジョンはJimi Hendrixをかなりリスペクトしており、特にソロでの感情表現という意味で似ている部分があります。
『Dani California』のギターソロは、ジョンなりの弔いと言えるでしょう。
レッチリとJimi Hendrixはカバー曲や歌詞との関連性など、多くの関連性があります。
▶【和訳と深堀り】レッチリ『The Heavy Wing』はジミヘンへのアンサー
まとめ:『Dani California』は音楽と歴史へのレクイエム

かなり長い記事になってしまいましたがいかがでしたでしょうか?
長くて飽きたよ~という方はごめんなさい(笑)
無数にいたであろう【Dani】へのレクイエム
すべての歴史に対してのレクイエム
自分たちの『Dani California』
彼らは今の自分達の成功をどのように思っているのでしょうか?
このブログでは、レッチリの曲を1曲ずつ深堀しています。
意見などコメントいただけると励みになります。
よろしくお願いします
ではまた
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