この記事では、彼らの心象風景を表現したかのような人気の曲『Scar Tissue』を掘り下げます。
それまでの成功から更にテイストを変え、しかも支持されるという偉業を成し遂げた7枚目のアルバム【Californication】に収録。
もしよかったら一つの解釈として読んで頂けると嬉しいです。
彼らの近況をまとめた記事はこちら
【Scar Tissue】lyric
[Verse 1]
Scar tissue that I wish you saw
Sarcastic mister know-it-all
Close your eyes and I’ll kiss you
‘Cause with the birds I’ll share
[Chorus]
With the birds, I’ll share this lonely view
With the birds, I’ll share this lonely view
[Verse 2]
Ah, push me up against the wall
Young Kentucky girl in a push-up bra
Ah, fallin’ all over myself
To lick your heart and taste your health, ‘cause
[Chorus]
With the birds (Share this lone—), I’ll share this lonely view
With the birds (Share this lone—), I’ll share this lonely view
With the birds (Share this lone—), I’ll share this lonely view
[Verse 3]
Blood loss in a bathroom stall
A southern girl with a scarlet drawl
I wave good-bye to Ma and Pa
‘Cause with the birds I’ll share
[Chorus]
With the birds (Share this lonely), I’ll share this lonely view
With the birds (Share this lonely), I’ll share this lonely view
[Verse 4]
Soft-spoken with a broken jaw
Step outside but not to brawl and
Autumn’s sweet, we call it fall
I’ll make it to the moon if I have to crawl and
[Chorus]
(I will share this lonely)
With the birds, I’ll share this lonely view
(I will share this lonely)
With the birds, I’ll share this lonely view
(I will share this lonely)
With the birds, I’ll share this lonely view
[Instrumental Break]
[Verse 1]
Scar tissue that I wish you saw
Sarcastic mister know-it-all
Close your eyes and I’ll kiss you
‘Cause with the birds I’ll share
[Chorus]
(I will share this lonely)
With the birds, I’ll share this lonely view
(I will share this lonely)
With the birds, I’ll share this lonely view
(I will share this lonely)
With the birds, I’ll share this lonely view
[Guitar Solo]
geniusより出典
【Scar Tissue】歌詞の和訳
[Verse 1]
このScar Tissue :瘢痕を君に見せてやりたい
知ったかぶりの皮肉屋
目を閉じたらキスするよ
だって鳥だけなんだから
[Chorus]
この孤独な世界がわかるのは
空飛ぶ鳥たちだけだから
[Verse 2]
私を壁に押し付けて
Pアップブラを着けたケンタッキーのお嬢さん
もうどうしようもないんだ
君の心を舐めて、あなたの健康を味わおうとする
[Chorus]
この孤独な世界がわかるのは
空飛ぶ鳥たちだけだから
鳥たちだけがこの寂しさを知っているんだ
[Verse 3]
トイレの個室で出血する
スカーレット・オハラみたいな訛りの南部の少女よ
ママとパパともお別れしなよ
だって鳥だけなんだから
[Chorus]
この孤独な世界がわかるのは
空飛ぶ鳥たちだけだから
[Verse 4]
歯の抜けたアゴで小声で話す
外に出るのは喧嘩をする為じゃない
秋(Autum)って言えば聞こえはいいけど、ようするに落ちる(fall)って事だろ?
這ってでも月に行ってみせる
[Chorus]
この孤独な世界がわかるのは
空飛ぶ鳥たちだけだから
鳥たちだけがこの寂しさを知っているんだ
[Instrumental Break]
[Verse 1]
このScar Tissue :瘢痕を君に見せてやりたい
知ったかぶりの皮肉屋
目を閉じたらキスするよ
だって鳥だけなんだから
[Chorus]
この孤独な世界がわかるのは
空飛ぶ鳥たちだけだから
鳥たちだけがこの寂しさを知っているんだ
[Guitar Solo]
【Scar Tissue】の意味
【Scar Tissue】という単語
【Scar Tissue】は日本語だと瘢痕組織。傷が回復するときにできるかさぶたのようなものです。
瘢痕組織というのは、ヘロインをやり過ぎると血管が損壊するのですが、その後体は再生しようとしてこの瘢痕組織を形成します。それが見た目的に火傷の痕みたいに残ってしまうのです。
※アンソニーの腕にはその痕がいっぱいあるらしいです。
【Scar Tissue】を物理的に解釈すると瘢痕組織ですが、比喩的に解釈すると数々の死や別れなど、決して他人には分らない心の痛みと言えるのではないでしょうか。
それはアンソニーが2004年に出した自伝のタイトルが「Scar tissue 」というタイトルにもつながります。
sarcastic:皮肉屋=知ったかぶりの皮肉屋は誰?
この皮肉屋は98年に脱退したデイヴ・ナヴァロの事です。
アンソニーがアルバム【Californication】を作っている時こんなやり取りがあったそうです。
リックルービンとオレはずっと風刺の事ばっかり話していたんだ。リックは、それがユーモアの恐ろしく有害な形で、当事者のやる気を失くさせるという理論を読んだんだ。オレたちはいつも面白おかしくそれを使っていたけど、何かの為に使った事なんてなかったよ。早くてキレのいい、嫌みの王様、デイブナヴァロの事も考えていたと思う。」 自伝「Scar tissue 」より
デイヴ・ナヴァロは薬物中毒でレッチリを首になっています。
その後にジョンが復帰するという・・・(ジョンはレッチリ脱退後のソロアルバムは薬を買う為に作ったと答えています)
繰り返される【孤独と空飛ぶ鳥達】
Chorus で繰り返される、孤独はヘロイン中毒が孤独だと言う事。空を飛ぶ鳥たちがハイになっている時を歌っています。
ドラックが相当気持ちがいいけど、死にたくはないでしょ?というヘロインを始めようとする人たちと、自分自身に対してのメッセージです。
「ジョンがギターのリフを弾き始めた時にこの考えが流れ込んできて、オレはこの歌の意味がすぐに分ったんだ。
それは遊び好きで、ああ生きていて良かった的な、不死鳥が灰の中から蘇る的な振動だったんだよ。携帯テープレコーダー片手に外に走って行って後ろから聞こえてくる音色に耳を傾けて、この曲のコーラスを全部歌いきったんだよ。
(フリーの)ガレージの向こうの空を見上げた時の事は忘れられない、真上を飛んでいく鳥たちと一緒にグリフィスパークの辺りまで見上げて、それでかもめのジョナサン一発キメたんだ。そしたらまじで鳥たちの視点から見えたんだ、なんかこのまま遠くに行っちゃうような気がしたんだ。」 自伝「Scar tissue 」より
田舎から出てきたケンタッキーのお嬢さん
Verse 2に出てくるお嬢さんはケンタッキーから都会に出てきた田舎者ではあるんだけど、Pアップブラを付けて性的な魅力もあわせ持った彼女。
田舎から都会に出てきて軽い気持ちで薬物に手を出してしまう。そんな無数の若者たちを表しています。
「君の心を舐めて、あなたの健康を味わおうとする」は性的な部分と、ヘロインの快感を比喩で表現していると思います。
Verse 3で彼女はヘロインをやってしまう
Blood loss in a bathroom stallをトイレの個室で出血すると訳しました。
これは自殺の事かと思いましたが、これはヘロインを打つ事の隠語らしいです。
彼女は軽い気持ちでヘロインを打ったかもしれませんが、両親とも別れ(自分の死?)になるかもしれませんし、抜け出せなくなるという若者へのアンソニーなりの警告なんだと思います。
scarletは「風と共に去りぬ」のスカーレット・オハラ
scarletは「風と共に去りぬ」のスカーレット・オハラを指していると言われています。
ケイティ・スカーレット・オハラ(Katie Scarlett O’Hara)は、マーガレット・ミッチェルの長編小説『風と共に去りぬ』及びその続編作品『スカーレット』に登場する架空の人物で、同作の主人公である。アメリカ南部の農園主の娘として生まれ、貴族同然の裕福な暮らしを送るが、やがて南北戦争に巻き込まれ、波乱な運命をたどることになる。
Wikipediaより
「風と共に去りぬ」は古い映画ではありますが、名作と呼ばれています。
アメリカでスカーレット・オハラと言えば南部の若い女性の象徴なのでしょう。
秋(Autum)と落ちる(fall)
Autumn’s sweet, we call it fallは「秋(Autum)って言えば聞こえはいいけど、ようするに落ちる(fall)って事だろ?」と訳しました。
秋と言えばAutumですが、fallも落ち葉を指すので秋という意味もあり、fall:季節の秋と、落ちる・堕落の意が掛かっています。
ケンタッキーから都会に出てきた彼女に「止めておきな」地獄までおちてしまうよって忠告しながら、アンソニー自身はその地獄から這い上がってきた。
「このまま地上どころか月まで上まで昇りつめてやる」っていう強い決意をする。
【Scar Tissue】の裏話
【Scar Tissue】はジョンが復帰してすぐの作品。
PVではそんなジョンが車の運転してるとこがポイントです。
というのもジョンは、昔に運転した時にジョギング中の人をはねてしまいそうになったらしく、それ以後、車の運転をしてなかったそうです。
PVは何を表している?
PVは4人が車に乗って荒野を旅するという内容。
その中でメンバーはあちこち怪我してたり、服もボロボロだったり。
これは、当時のレッチリの置かれた状況を表してるようにも見えますし、ドラックから抜け出そうとする心象風景のようにも見えます。
ジョンとフリーのギター、ベースのネックが折れている
一見ジョンの折れているギターが目立ちますが、実はフリーのベースもネックも折れています。
つまり自分たちの武器である音楽も、ボロボロの状態だけど信じる道を突き進む。
ここは歌詞のI’ll make it to the moon if I have to crawl and:月まで上まで昇りつめてやる=正解かはわからないけど自分たちの信じる道を突き進む。
そんな彼らの決意のようにも見えます。
PV監督はステファン・セドナウイ監督
監督は、「Breaking the Girl」「Give It Away」などのビデオを手がけるステファン・セドナウイ。
ステファン・セドナウイはファッション写真家としてデビューし、MV監督としてもレッチリの他にR.E.M.やU2、なども手がけました。15年間に渡って約70本のMVを演出しました。
アンソニーが参考にしたの短編『カモメのジョナサン』
アンソニーのインタビューによると、この曲のインスピレーションとして、元メンバーのデイヴ・ナヴァロと、リチャード・バックの短編小説『カモメのジョナサン』が挙げられています。
小説『カモメのジョナサン』は擬人化された動物(カモメ)のジョナサンの物語です。
ジョナサンは群れの常識に縛られない自由な生き方を選び、自分なりの飛行技術を追求していきます。
小説のテーマは自分の行きたい道を究めるのであれば、仲間を捨て大多数の掟に逆らう事や足かせになる場合もある。
より高みに行こうとする者は孤独でもあるが、その先には同じ仲間ができたり己の存在を後世に残すことが出来る。
【Californication】で大きく方向転換した彼らに似ていますね。
まとめ
この記事では彼らの心象風景を表現したかのような人気の曲『Scar Tissue』を掘り下げました。
PVも象徴的ですが小説『カモメのジョナサン』を読むことで、彼等の当時の心情もより理解できたような気がしました。
さすがのアンソニー。ただのドラック=危険という曲ではありませんでした。
日本でドラックの危険性を身近に感じる場面は少ないですが、アメリカだともっと生活にドラックが入り込んでいるのでしょう。
レッチリの曲でドラックを扱われた楽曲は多く、それだけ彼らが多くの体験をしてきたとも言えます。
余談ですが
個人的にドラックの怖さを知るなら、ダーレン・アロノフスキー監督のレクイエムレクイエム・フォー・ドリーム という作品で危険性は100%伝わると思っています。
あくまでもこの解釈は私の考えなので、反対の意見があっても歓迎です。
皆さんの考える【Scar Tissue】をコメント欄に頂けると嬉しいです。
【和訳と深堀り】は他の曲も取り上げています。
ではまた
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