ドラマ版『ラスアス シーズン2』が4月13日配信スタートされます。
「めちゃくちゃ楽しみ~」という事でシーズン1を見返しながら、当時途中まで書いていた記事をUPしました。
『ラスアス』第3話は「歴代ベスト」の声も多かった。続く4話~6話では、どんな展開が待っていたのだろうか。
4話~6話ではジョエルとエリーの絆が試される出来事が次々と襲いかかりました。
ヘンリーとサムの悲劇を通して、エリーは無力さを痛感し、ジョエルもまた彼女を守ることへの決意を強めていきます。旅の中で変化していく二人の関係性は、本作の大きな見どころの一つ。
ところで
『ラスアス』ドラマ版はつまらないという声や、エリー役のベラ・ラムジーが似ていないなどの意見もあります。
これに対して思うのは、ドラマ版も感染者や対抗勢力との戦闘をメインにしたら・・他のアポカリプス作品と変わりません→制作する意味がない。
ゲーム版エリーの顔に似ている俳優は確かに他にいるかもしれない。ですが、エリーの無邪気さと冷徹さや、心の複雑さの表現は素晴らしいと思いますし、キャラクターの新たな魅力を引き出したとも言えるのです。
ネタバレになるので本編を見てから読んでくださいね。
ラスアス ドラマ 4話~6話のストーリー

ファイアフライの研究施設を目指す2人は、足掛かりとなる弟のトミーを探してワイオミングを目指します。野外でキャンプをしたり緊張感がありながらも、擬似親子的な関係は次第に深まっていきます。
4話「この手につかまって」
ジョエルとエリーは、ジョエルの弟トミーを探すためにトラックでワイオミングへ向かいます。
トラックでの会話からでエリーはこの地獄のような世界でも希望を見出し生きている。それに対しジョエルは「お前は世界を知らない」と答える。
4話の印象はゲームの忠実な再現や再構成をうまく織り交ぜながらゲームの世界観をドラマに落とし込む。そんな回でした。
例えば、車の中でビルのものと思われる成人誌をエリーが見つけ、ジョエルが困惑するシーンやトラックが罠にはまりショップに突っ込むシーン。
仲間を殺したジョエルを銃で首を抑えつけた時、後ろからエリーに撃たれた若者は、ブライアンと名乗り必死で命乞いを始めます。
ジョエルに「むこうに行ってろ」と言われて立ち去るエリーに「行かないでくれ」と懇願し、「お母さん!」と叫びながら、ジョエルにトドメを刺される…。
『ラスアス』の世界観はとにかくリアルだ。名もないようなモブキャラにも名前があり必死にこの世界を生きているのである。どちらが善でも悪でもなく必死に今を生きているそんな世界だ。
ゲーム版では、勝手に銃を撃ったエリーに対して、ジョエルは怒りをぶつけるが、ドラマ版では自分が不甲斐ないせいで、エリーに銃を撃たせたことを悔やみ、申し訳ない…と謝罪する。
それを聞いたエリーは、自分が傷ついていたことに今気づいたかのように涙を流す。
この世界は自分の感情より生き抜く事で精一杯なのだ。
ジョエルとエリーは危険なカンザスシティーを徒歩で移動することになる。また反乱軍のリーダーであるキャスリンは、殺された兄の仇を討つためヘンリーという男を捜していたが・・・
高層ビルの33階で、エリーが再びジョークを言うと、ジョエルは思わず吹き出してしまう。声に出して笑うほどにジョエルがはっきりと笑顔を見せたのは、おそらく第1話の20年前の場面以来だろう。
二人の距離が縮まる中そのままで終わらないのが『ラスアス』。
最期は、銃口を突きつける黒人少年サムの姿で終わる。
5話「耐えて行き抜け」
《ヘンリーはなぜキャスリンの兄を売ったのか?》
キャスリンはヘンリー・バレルを執拗に追っていた。理由は彼女の兄が、ヘンリーの密告によってFEDRAに殺されてしまったから。
しかし、ヘンリーにも理由があった。彼の弟サムは白血病を患っていて、軍が独占していた薬がどうしても必要だった。そのために、レジスタンスのリーダーだったキャスリンの兄を売ったのだ。
ヘンリー自身、自分の行いが正しいとは思っていない。でも、弟を守るためには仕方がなかったとも感じている。
この物語では
《何を犠牲にしてでも大切な人を守る》
という全体のテーマが強く描かれており、ヘンリーの選択も、まさにその一つ。
一方キャスリンにとって、兄を奪われたことへの復讐は当然のことだった。
終末世界では法も秩序も崩れ去り、自ら正義を執行するしかない。
さらに、彼女はレジスタンスのリーダーとして、兄の死を無駄にしないためにも密告者であるヘンリーを追う責任があると考えていた。そもそも、兄は「ヘンリーを許せ」と言っていた。それなのに、彼女は復讐をやめることができなかった。
《罪を許すことが出来るのか》
これは特に『THE LAST OF US part2』の大きなテーマですべての登場人物に降りかかる。
サムは耳が聞こえないのはドラマオリジナルの設定。手話や筆談でエリーとコミュニケーションを取るキャラクターとして現代的な解釈がされている。エリーとサムの最後のやり取りも一層際立った。
2人きりに戻った後、サムとヘンリーの死をあっさりと受け入れ先に進んでいく。
サムが拾う『サベッジ・スターライト』は、ゲーム版『ラスアス』にも登場する架空のSFコミック。エリーのお気に入りのシリーズで、ドラマ版でも彼女が興味を示し、「4・5・5・11巻」を持っていると語る。ゲームでは、ジョエルがエリーのために各ステージでコミックを集める要素として登場する。
6話「親族」
第6話では感染者が一切登場せず、ジョエルの弱さとエリーの成長が強調された人間ドラマに重点が置かれている。
サムとヘンリーの死から3ヶ月ほどたち、物語は雪に覆われた冬の世界へ。
ジョエルとエリーはワイオミング州ジャクソンの集落に到着し、弟のトミーと再会する。
ゲーム版『THE LAST OF US part2』に登場する町が忠実に再現され、民主的なコミュニティとして描かれている(「じゃあ共産主義ってことだな」とジョエルに茶化されているが・・)。
ジョエルは自分の弱さを認め、エリーを守れないかもしれないと恐れるようになっていた。
娘を失った過去に囚われ、新たな人生に祝福もしないジョエルに、トミーは「兄貴の人生が止まっても、俺の人生は止まらない」とトミーはジョエルに言い放つのだった。
エリーが免疫を持っていることをトミーに告げたものの、ジョエルは心身の衰えを感じ、エリーに多大な負荷をかけてしまった。さらに街に来る前、エリーに犬がけしかけられた時も、ジョエルは「怖くて動けなかった」と正直に告げる。
一度はトミーにエリーをファイアフライの元へ連れて行くよう頼んだものの、エリーは自分の意志でジョエルとの旅を続けることを決める。
《守るものがあると人は臆病になる》
大切な人がいるからこそ自分が犠牲になることに不安を抱く。
エリーもまた一人になることに恐怖を感じていた。2人がもう離れられない存在であることを、改めて確認することになった回だった。
4話~6話の名シーン徹底解説

ここでは4話~6話の印象深いシーンをピックアップします。
感動を呼んだ名シーントップ3
4話から6話までの中で、私が特に心に触れたシーンを振り返ります。
エリーがジョエルに対して見せた無邪気な一面や、ジョエルがエリーを守るために取った行動は、心に深く響きました。
- 第5話:ヘンリーがサムを射殺し、自らも命を絶つシーン
- 第6話:ジョエルがトミーにエリーを託そうとするシーン
- 第4話:ジョエルがエリーに銃を撃たせたことに「すまなかった」と謝罪するシーン
第5話:ヘンリーがサムを射殺し、自らも命を絶つシーン
弟のサムが感染してしまい、ヘンリーが苦渋の決断を下し、自らの手でサムを撃ち殺すという悲劇的なシーン。
何よりも大切だった弟を守るために生きてきたヘンリーが、その弟を失い、絶望のあまり自らも命を絶つという展開は、原作を知っていたとしても衝撃だったと思います。
ここで物語で何度も繰り返されるテーマが浮かび上がってきます。
《罪を許すことが出来るのか》
エリーがサム達の墓に「ごめんね」と書き残しながらも、悲しみをいとも簡単に処理している。
そのことによって、彼らが悩みながらも取ってきた行動も死んでしまえば全てが無意味で無価値と言われているようで虚しさがいっそう際立つシーンだった。
第6話:ジョエルがトミーにエリーを託そうとするシーン
再会した弟トミーに対し、ジョエルは自身が老いて弱くなっていること、耳も遠くなったこと、エリーに助けられていることなどを率直に認めます。
過去の娘のトラウマからエリーを自分が死なせてしまうのではないかと恐れ、涙ながらにトミーにエリーをファイアフライの元へ連れて行ってほしいと頼み込むのです 。
これまでタフで頼りになる存在だったジョエルが、内面では自身の弱さを感じ、弟に助けを求める姿は、彼の内面の葛藤とエリーへの深い愛情を示すシーンでした。
第4話:ジョエルがエリーに銃を撃たせたことに「すまなかった」と謝罪するシーン
敵との遭遇で、エリーが銃を撃ってしまった後、ジョエルはエリーに人を撃たせてしまったことに対して「すまなかった」と謝罪します。
ゲーム版と違うのはジョエルは怒りをぶつけるが、ドラマ版では自分が不甲斐ないせいでとエリーに謝罪します。
子供に銃を持たせ、暴力を経験させてしまったことへの後悔と、エリーへの優しさを示すこの場面は、二人の間に育まれつつある絆を感じさせました。銃社会であるアメリカではより突き刺さる内容だったと言えます。
心を揺さぶったセリフ
ゲーム版から受け継がれる『ラスアス』の魅力の一つは、キャラクター同士の会話や演出の細かさです。
第5話:サムが感染し変貌を遂げる前夜
エリーの「独りぼっちになるのが怖い」という言葉や、サムの「怪物になっても中身は自分のまま?」
メッセージボードでのやり取りが言葉を発するより印象深かったです。
第6話:マリアの「信じる人は選べ、信じた人にしか裏切られない」
マリアは、ジョエルが娘を亡くしていたことをエリーが知らないと言うのに対し、エリーがトミーも人を殺していたと言い返した際に、このセリフを言います 。
「信じる人は選べ、信じた人にしか裏切られない」
この言葉の意味は、終末世界において、生存のために他人との協力が不可欠となる一方で、裏切りもまた日常的に起こりうる残酷な現実です。
オリジナル演出
ドラマ版はゲーム版に忠実な部分がある一方で、多くのオリジナル演出もあります。
第4話冒頭のエリーが鏡の前で銃を構えるシーン
これはエリーの週末世界を生きるタフな一面と、まだ子供である危うさを同時に示唆するドラマオリジナルの演出です。
第4話で、敵に撃たれた仲間が動揺する様子や、命乞いをする敵の姿を詳細に描く点
ゲーム版では敵は淡々と倒される存在として描かれることが多いです。
ですが、ドラマ版では「やられた側」の人間ドラマを掘り下げ、暴力のリアルさを強調しており、『THE LAST OF US part2』でも強調された演出です。
第5話におけるサムが耳が聞こえないという設定
この設定によってサムとヘンリーの関係性や、エリーとのコミュニケーションが、さらに深く心に残る演出になっています。
サムの年齢もゲーム版の13歳から8歳に引き下げられることでエリーとの対比になっています。
第5話でサムが描く黒人のスーパーヒーローの絵
これは、多様性への配慮や、子供たちが共感できるヒーロー像の不在を示唆するドラマオリジナルの要素と考えられます 。このようにサムを深く掘り下げることで、ラストシーンがより深く刻まれました。
第6話冒頭の、老夫婦がジョエルに銃を突きつけられながらも冷静に会話するシーン
これは、シリアスなドラマの中で貴重なユーモラスな場面であり、重厚なストーリーの息抜き的なドラマオリジナルの演出です 。
第6話でエリーが指笛の練習をする描写
ゲーム版では口笛の練習をしますが、ドラマでは指笛になっていました。
第6話のエンディング曲
Depeche Mode(デペッシュ・モード)の1987年の楽曲「Never Let Me Down Again」をジェシカ・メイジンがカバーしたバージョン。
ジェシカ・メイジンは脚本家クレイグ・メイジンの娘です。
「Never Let Me Down Again」は、現実逃避と厳しい目覚めを描いた楽曲であり、「親友」との旅、高揚感、安全の約束と信頼がテーマとなっています。
薬物やアルコールを含むあらゆる現実逃避を象徴しています。ドラマでは、感染した世界からの逃避、ジョエルとエリーの信頼関係、荒廃した現実と幻想的な美しさの対比が描かれ、ジョエルの嘘も曲の「約束」と重なります。
希望と絶望の狭間で揺れる人間の姿を描き、厳しい現実の中での人間関係の複雑さを探求しています。
原作との違いとドラマ版ならではの魅力
ドラマ版は、アクションシーンよりも人間関係や感情の機微を丁寧に描き出すことに重点を置いています。
ジョエルとエリーの関係性の変化、ヘンリーとサムの兄弟愛、キャスリンの復讐心など、キャラクターたちの内面が深く掘り下げられ、視聴者の共感を呼び『ラスアス』の世界観をより広げることに成功しています。
4話から6話では、キャラクターの心情を映し出す印象的なセリフが多く登場しました。
ドラマならではの解釈や深みが加わり、各キャラクターがまさにリアルに生きていました。
これはゲーム版プロデューサーのニールドラッグマンが参加している影響が大きいでしょう。
2人の心理の変化と関係性の変化

主要キャラクターたちの心理変化を描き出し、彼らの関係性が様々な出来事を通してどのように変化していくかを深く掘り下げていきます。
ジョエルの心境の変化と成長
ジョエルは、パンデミック発生時に娘サラを失い、そのトラウマから感情を抑え、他者との関係を避けて生きてきました。しかし、エリーとの旅を通じて徐々に変化していきます。
信頼の芽生え
今までエリーから銃を遠ざけてきたジョエルが、エリーに人を撃たせてしまった事をきっかけに銃の扱い方を教えることで彼女を信頼し始めたことが伺えます。
高層ビルのシーンでは、エリーが再びジョークを言うと、ジョエルは思わず吹き出してしまいます。
声に出して笑うほどにジョエルがはっきりと笑顔を見せたのは大きな心境の変化でした。
共通の目的と喪失
ヘンリーとサムとの一件から、ジョエルは「守るべき存在」の大切さを実感します。
エリーを「荷物」と思っていた彼が、徐々に大切な存在として認識。
ヘンリーとサムの死はジョエルにとっても喪失の痛みを再認識させましたが、彼らの墓を後にする二人は《死んでしまったら無意味だ》と言っているかのようでした。
疑似親子として
ヘンリーとサムと別れてから3ヶ月の旅を経て、二人の関係はより強固になります。ジョエルはエリーに自身の夢を語り、彼女もジョエルを信頼するようになります。
しかし、「自分ではエリーを死なせてしまう」と自身の老いやエリーを守れないかもしれないという不安から、トミーに彼女を託そうとします。
最終的にはエリーがジョエルと旅を続けることを選び、二人の絆はより強まります。
ジョエルはエリーとの関わりを通じて、かつてのトラウマから解放されていき、人としての感情や信頼することを取り戻していきます。
エリーの感情の揺れと強さ
エリーの成長や感情の変化を読み解きながら、彼女がどのようにジョエルに影響を与えたのかを考えていきます。
初期の感情と強がり
エリーは第4話で、ビルとフランクの家で手に入れた銃を構え、タフであろうとする強がりを見せますが、まだ子供ゆえの危うさも感じられます。
一方で感染者を冷酷に始末する姿には、生き抜くための残酷さとともに、子供ならではの純粋な残虐性もありました。
ジョエルとの関係性も旅を通じて変化します。第4話ではジョークを言って彼を笑わせる無邪気さを見せる一方、人を撃ったことで動揺し、ジョエルに謝罪されると涙を流します。
この世界は強くなければ生き残れないそう思ってきたエリーが、自分の弱さに気付く瞬間でした。
逆境における強さ
エリーは、数々の悲劇的な出来事を経験しながらも、決して折れることはありません。
ヘンリーとサムの死 を経ても、ジョエルと共に旅を続けることを選びます。
第7話で描かれるゲーム版「Left Behind」のエピソードでは、親友ライリーとの別れという大きな喪失を経験していることが示唆されており、現在のエリーの強さの背景には、このような過去の辛い経験があることが分かります。
エリーは、どのような状況においても、生き抜こうとする強い意志と、大切な人を守りたいという純粋な気持ちが彼女の行動の原動力となっています。
彼女の感情の揺れは、人間味あふれる魅力であると同時に、その強さの源泉となっています。
サブキャラクターの役割
『ラスアス』に登場するサブキャラクターたちは、エリーの成長に大きな影響を与える存在です。彼らとの出会いと別れを通じて、彼女の価値観が形作られていきます。
ヘンリーとサムとの交流では、サムの死がエリーに深い喪失感を刻み、《生きることの意味》を強く意識させました。
キャスリンの復讐心は、エリー自身が後に経験する復讐の連鎖へ繋がる伏線とも言えます。
様々なキャラクターはエリーは愛する人を失う悲しみ、守ることの責任、そして世界の残酷さを学ぶ成長の糧になりました。
まとめ:今後の展開予想と考察

4話~6話では、ジョエルとエリーの関係がより深まると同時に、サムとヘンリーの悲劇、ジョエルの弱さの露呈など、心を揺さぶる展開が続きました。
ここから物語は終盤に向けて、さらに加速していきます。
今後の注目ポイント
- ジョエルの父性とエリーの自立
- 「生きる」ことの意味と道徳的葛藤
- 人間の善悪が曖昧な世界での選択
エリーがどのように成長し、ジョエルとの関係がどんな結末を迎えるのか――原作ファンでも新たな発見がある展開になるでしょう。
ではまた
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