ジャッロ映画は60年代70年代に流行ったイタリアのホラー映画。
「ジャッロ映画を知っているなんてぇ~~ さすがホラー映画通ですね」
と言ってくれる方があなたの周りにいるかは分かりませんが・・・
先日紹介した監督【マリオ・バーヴァ】がホラー映画のクラシックを創生した人物ならば、
【ダリオ・アルジェント】は【マリオ・バーヴァ】の要素を抽出し煮詰め、世の中によりポップに広めた存在と解釈しています。
彼の代表作は一般的には魔女三部作『サスペリア』が上げられることが多いでしょう。
ですが彼の本質は、本格ミステリー監督かもしれません。
それは『サスペリアPART2』(プロフォンド・ロッソ)や初期の作品を見れば明らかです。
【ダリオ・アルジェント】は「幼少期からエドガー・アラン・ポーに影響を受けていた運命に刻まれた作家」とダークグラス(2022)発表時に語っていました。
ジャッロ映画というジャンルは、色彩や残酷描写に目がいきがちですが、本質は予想外のストーリーやトリックなどミステリー要素も大きいと感じます。
この記事では【ダリオ・アルジェント】の影響と初期三部作の紹介を通して、彼の作家性をわかりやすく紹介できればと思っています。
『サスペリア』リメイク版の紹介もあるので最後まで楽しんでください。
この記事が【ダリオ・アルジェント】やジャッロ映画の入口になればと思います。
【ダリオ・アルジェント】初期の動物3部作で配信されているのは『わたしは目撃者』(1971)だけでした。
配信されていない作品を楽しむには【ゲオの宅配レンタル】などの宅配レンタルが便利です。
【ダリオ・アルジェント】の子供たち
【ダリオ・アルジェント】と言えば『サスペリア』をはじめとする原色を使った色彩。まさにジャッロ映画と誰もが感じることでしょう。
※ジャッロ映画は、1960年代から1970年代にかけてイタリアで流行した独特の恐怖・スリラー映画のジャンルです。
彼の作品のシーンはどれも絵になりますし構図も素晴らしい。
【ダリオ・アルジェント】は映像美が賞賛されがちです。また、一部では脚本はあまり評価されず、シーンありきで撮影していてストーリーも単純という声もあるようです。
ですが、
彼が映画批評家を経て、脚本家からキャリアをスタートさせたことを、知っている方は少ないのではないでしょうか。
【一見脈略のない展開でも、意図して行う事により、忘れることのできない強烈に脳裏に焼き付くシーンになる】
これを彼は意図してやっているんです。つまり、まんまと彼の策略にはまっているんです(笑)
では【ダリオ・アルジェント】の虜になってしまった監督を紹介していきましょう。
ルカ・グァダニーノ監督×ジャッロ映画
【ルカ・グァダニーノ】は【ダリオ・アルジェント】と同じくイタリア出身の映画監督。
なんといっても『サスペリア』リメイク版を撮った監督です。
ダリオ・アルジェントとの出会い
【ルカ・グァダニーノ】が【ダリオ・アルジェント】の『サスペリア』のポスターを初めて見たのは10歳の時、サマーキャンプで訪れていた北イタリアの映画館でした。
当時の彼は「何のポスターかは分からなかった。でもビジュアルがあまりにも強烈で、頭の中でイメージがどんどん膨らんでいったんだ。毎朝、映画館の前を通るときだけは歩をゆるめ、ポスターをみつめ、じっと見入ったよ。それが『サスペリア』との出会いだ」
と語っています。
13歳になった【ルカ・グァダニーノ】は、イタリアの国営テレビで「サスペリア」を初めて観賞し、衝撃を受けました。
「私は1人で部屋に行き、鍵をかけて『サスペリア』を観たんだ。私は恐怖に怯えながらも、気持ちが高揚するのを感じていた。映画の印象があまりにも強烈で、ずっと心から離れなかった。とにかく“もう一度観たい、この映画について知りたい”という一心で、公立図書館へ行き、映画が公開された当時の新聞を探し出して読んだりしたよ」と語っている。
『サスペリア』の虜となった【ルカ・グァダニーノ】は、あるノートを作りました。
彼は《『サスペリア』監督:ルカ・グァダニーノ、ダリオ監督の映画から着想》と書き記し、自分ならどんな「サスペリア」を作るか構想を練り始めたと明かしました。
ジェームズ・ワン監督×ジャッロ映画
ジェームズ・ワン監督と言えば、ワンシチュエーションホラーの初監督作『ソウ』を思い浮かべると思いますが、私は『マリグナント 狂暴な悪夢』でジャッロ映画を現代に呼び戻したと思っています。
親友リー・ワネルと共に、まずは企画を実現するため脚本を書き上げ、少ない予算で8分間のパイロット版DVDを制作して映画会社に売り込みました。これが、プロデューサーのマーク・バーグの目に止まりの製作につながりました。
低予算のため18日間という短期間で撮影された『ソウ』はカンヌ国際映画祭でも上映されたのがきっかけとなり世界でも大ヒットし一躍有名監督の仲間入りしました。
その後も『インシディアス』、『死霊館』といったホラーシリーズを次々と生みだしてきたジェームズ・ワン監督。
『ワイルド・スピード SKY MISSION』(15)や『アクアマン』(18)などのアクション大作も手掛けているのがユニークです。
ダリオ・アルジェントの影響
ジェームズ・ワンは『ワイルド・スピード SKY MISSION』(15)などの大作映画でホラー映画から遠ざかっていましたが、もう一度ホラー映画にカムバックした作品が『マリグナント 狂暴な悪夢』です。
この作品はホラー映画でありながらアクションシーンも多くあり、大作映画の経験が十分に生かされています。
ですが、インスピレーションという点でいえば、やはり「ジャッロ映画」でしょう。
『ソウ』の頃から、【ダリオ・アルジェント】を尊敬していると公言しており、とくに『サスペリア PART2』に関しては、「大きな衝撃を受けた」と語っている。
『サスペリア PART2』(75)や『歓びの毒牙』(70)を思わせるようなコート&手袋という殺人鬼のスタイルや、赤を基調とした照明、主人公が自力で謎に迫る展開と、ジャッロ映画のスタイルが存分に発揮されています。
『マリグナント 狂暴な悪夢』以外の影響だと、『ソウ』シリーズのビリー人形や、『デッド・サイレンス』(07)の腹話術人形、『死霊館』シリーズのアナベル人形など、印象的な人形が登場しています。
クエンティン・タランティーノ監督×ジャッロ映画
タランティーノの作品には、『レザボア・ドッグス』を始め、『パルプ・フィクション』『ジャッキー・ブラウン』などクライムムービーが多いです。ジャッロ映画ではないですが、ホラー映画ということで予告をどうぞ。
彼の父親はイタリア系アメリカ人ですが、母親は16歳の未婚で生んだ為、父親にあったことはないそうです。もしかして父親は本当のイタリア系のマフィアだったのでしょうか?・・・
妄想は膨らみますが、マカロニウエスタンへのオマージュや、エンニオ・モリコーネを起用するのはそんな出生が関係しているかもしれません。
幼い頃に感じた恐怖
タランティーノの母親は大の映画マニアだった母親の影響も大きく受けたようです。
彼が幼い頃感じた恐怖として、このようなエピソードを語っています。
彼はテネシー州ノックスビルで生まれましたが、5歳か6歳の時、真夜中に殺人犯がハンマーで殺しまわったというニュースを聞いた時、現実の方が映画などの虚構よりよっぽど恐ろしかったと語っています。
この事件調べてみましたが出てきませんでした。彼は地元のローカルニュースで耳にしたそうです。
ロサンゼルスの凶悪事件というとチャールズマンソン事件が有名ですが、当時のカルフォルニアはかなり物騒な地域だったことがうかがえます。
この時代は、他にもゾディアック事件など、恐ろしい事件が多くありました。
余談ですが、デヴィッド・フィンチャーはゾディアック事件当時7歳~9歳ぐらいでした。事件の犯人が捕まっていないのに、自分をスクールバスに載せて通学させる両親に疑問をもっていたそうです。
『サスペリア PART2』を見た感想
タランティーノが『サスペリア PART2』を見たのは彼が14歳~15歳の頃。
当時14歳~15歳で【ダリオ・アルジェント】の名前も知らなかったし、イタリア映画とも知らず一人で見に行ったそうです。ですが、恐ろしい殺人が次々と起きて、大量な血や、ゴブリンの音楽など強烈に頭に残ったそうです
これを骨がガタガタと音を立てて震えたと表現しています。
特にバスタブの熱湯に顔を押し込み殺害されるシーンは特に印象に残っていたそうです。
マリオ・バーヴァの後継者【ダリオ・アルジェント】
1940年、イタリア・ローマ生まれの【ダリオ・アルジェント】は、映画プロデューサーの父、写真家の母のもとで育ちました。学生の頃、新聞社「パエサ・セラ」に映画評を寄稿したのがキャリアの最初でした。
その活動がセルジオ・レオーネ監督の目に止まり、ベルナルド・ベルトルッチとの共同でセルジオ・レオーネ監督作品 『ウエスタン』(1968)の脚本に参加、マカロニ・ウエスタンや戦争映画の脚本を執筆します。
『歓びの毒牙』(1970)で監督デビューを飾り、『わたしは目撃者』(1971)、『4匹の蝿』(1971) を含めた“動物 3 部作”でジャッロ映画の人気監督の地位を確立しました。この3作は、あのエンニオ・モリコーネが音楽を担当
初期の傑作“動物3部作
動物 3 部作とは【ダリオ・アルジェント】の初期の 3 作品を指します。
- 『歓びの毒牙』(1970)
- 『わたしは目撃者』(1971)
- 『4匹の蝿』(1971)
動物3部作の意味は、動物や昆虫が比喩として使われたり、謎解きに用いている為です。
初期作品ながら殺害シーンのビジュアルや怪しい雰囲気など【ダリオ・アルジェント】らしさは全開でシーンの作り方はさすがです(笑)
ここからは3作品のあらすじと簡単な感想を紹介します。
『歓びの毒牙』(1970)あらすじ|レビュー
あらすじ
アメリカ人作家のサムは、旅行中のローマで起きた連続殺人事件に巻き込まれます。サムは画廊で男女が格闘している場面を目撃しますが、犯人を取り逃がしてしまいます。目撃した女性モニカは、最近発生しているブロンドの女性を狙う連続殺人事件の4人の目の被害者でした。 サムは事件の参考人として警察に足止めされ、パスポートを押収されます。
独自の調査を開始したサムは、現場で聞いた不気味な鳥の鳴き声を集中して事件の真実を追い始めます。彼は「水晶の羽を持つ鳥」という重要な手掛かりを発見し、その鳥がローマの動物園にいることを突き止めます。
レビュー
ダリオアルジェントの監督一作目にして、彼らしいカメラワークが炸裂。
原題は『The Bird With The Crystal Plumage』
犯人がナイフを持って襲う犯人視点の描写。(この犯人の手は監督自身)フォーカスを多用することで生まれる緊張感。赤を効果的に使った色彩感覚。真っ白な画廊で黒づくめの犯人が白いドレスの美女を刺し、赤い血が流れるは残虐さと美しさを醸し出している。粗削りながら【ダリオ・アルジェント】のエッセンスが濃厚に詰まっていました。 原作:フレドリック・ブラウンの小説「通り魔」
『わたしは目撃者』(1971)あらすじ|レビュー
あらすじ
盲目の老人・フランコは失明して新聞記者を辞めて以来、姪のローリーと暮らしていた。フランコは近くの遺伝学研究所で起きた出来事の会話を思い出します。翌日、その研究所の科学者が電車に轢かれて死亡。
フランコはこれが事故ではないと直感し、若手新聞記者カルロ・ジョルダーニと協力して調査を始めます。調査が進むにつれて、研究所の秘密のプロジェクトに関連する連続の殺人事件が明らかになっていきます。
レビュー
原題『The Cat o’ Nine Tails』
予告にもある通り列車事故が起きるんですが、クルクルっと回るシーンはショッキングを越して(笑)盲目の主人公のイメージがカットバックで入る演出は好みでした。眼球のアップが印象的ですが、エンリオ・モリコーネの音楽は時代劇のようなほのぼの感があります。【この音楽は映画に合ってるのか??】今作では、ディープ・パープルに音楽を依頼しようとしていたという逸話もあります。(その方がよかったかも・・)
【爆笑ポイント】殺されてカミソリで切られた友人を見たあと、髭剃りをする理容師と事件の話をしながら怖くなって途中で逃げ出すという(笑)→理容師「えっ途中でいいの?・・・・」
『4匹の蝿』(1971)あらすじ|レビュー
あらすじ
ロックバンドのドラマー、ロベルトは、黒いハットの男に付きまとわれていた。ある夜、執拗な嫌がらせに腹を立て男に詰め寄ると、はずみで彼を殺してしまいます。その現場が覆面を被った人物に撮影され、脅迫電話や不可解な殺人事件が次々と周りで起こり始める。
レビュー
原題『Four Flies on Grey Velvet』
主人公がドラマーという点、音楽好きの私はオープニングの演奏シーンに持っていかれました。「どうしてドラマー?」というのは一旦置いておいて、注目されるのはラストシーンのスローモーションの衝撃度。なぜスローモーションという点も置いておきましょう。
ドラマーという設定は完璧に【ダリオ・アルジェント】の趣味でしょう(笑)
タイトルの蠅は匂い(怪しい)のするモノにたかってくるという比喩的な意味だと思います。
ダリオ・アルジェント代表作『プロフォンド・ロッソ』
【ダリオ・アルジェント】の代表作といえば『サスペリア PART2』((Deep Red:プロフォンド・ロッソ)という方も多いでしょう。
一応説明しますが『サスペリア PART2』は『サスペリア 』(1977)より2年も前に作られた作品。2作品に繋がりはなく、アメリカの原題は『Deep Red』です。何がDeep Red】なのかはお楽しみ・・・
『サスペリア 』(1977)に関してはここでは割愛します。
※さらに雑談ですが、【ダリオ・アルジェント】の『プロフォンド・ロッソ』というホラーショップがローマにあります。【ダリオ・アルジェント】のファンが一度は訪れたい場所。
【ダリオ・アルジェント】の特長として『サスペリア』の暗闇や光と三原色に彩られたジャッロ要素は大きな魅力ではありますが、それらは彼の師匠にあたるマリオ・バーヴァやヒッチコックからの引用に過ぎません。
一方で、彼のミステリー的な要素は、明らかに彼独自の個性だと、『サスペリア PART2』や初期の三部作を見ると感じます。特に『サスペリア PART2』のトリックや伏線の張り方など、現代の映画に負けていません。これは、もう一人の脚本家ベルナルディーノ・ザッポーニの手腕も大きい
音楽にロックバンドのゴブリンを起用したのセンス。個人的にはスリリングさよりゴブリンのカッコよさの方が際立っちゃいました。
ミステリー要素という点で第一作目『歓びの毒牙』からして意外な犯人を用意している(現代では典型的ではあるが当時としては・・・)ですが、ミステリーやサスペンスのある種の型を【ダリオ・アルジェント】が作ってと言っても良いでしょう。
『サスペリア PART2』の絵のトリック
有名な絵のトリックは「映像でしか実現できないトリック」で実に映画的です。
「主人公を含めた観客全員が、犯人をはっきりと目撃しているのに、なぜか誰も気づかない」
タネを明かせば、それこそバカみたいなトリックですが、アルジェントは主人公と同じ視点を観客に持たせ「謎」の核心として機能させています。小出しに視覚的情報を提示しながら、アルジェントが主人公と僕たちの「認識」を自在に操っていくのは、実に上手い。真犯人の性別にもきっと騙されるはず・・
今ではおなじみの手法
『サスペリア PART2』のホラーとして現代への影響といえる要素、「様式美」や「趣向」、「けれん味」がありえないバランスで成立している作品です。
「意外な犯人」や「映像でしかできないトリック」に加えて、本作にはミステリーでお馴染みのいかにもな手法がてんこ盛りに投入されています。
「怖い童謡」、「ダイイング・メッセージ」、「不気味な人形」、「怖い児童画」、「封印された秘密の部屋」など、まさに今からすると使い慣らされた手法を、40年も前の作品で確立させたセンスが素晴らしい。
現代へのホラー要素
何かが起きそうな気配の作り方。殺人鬼の影と怯える描写の対比。ちょっとやり過ぎな犯人視点の一人称。実はナイフを持った犯人の手は、つねにアルジェント本人がこだわりをもってやっていようです。
冒頭のヘルガは背中に肉切り包丁を振り下ろされた挙句、窓ガラスの破片を首に食い込ませて亡くなるし、カルロはトラックに引きずられ気絶したところを頭を轢かれる。血の色がリアルでない為グロいとはあまり思いませんが、なかなかのシーンでした。
死から逃れられないという点で『ファイナル・デスティネーション』のようだし、『ソウ』シリーズの死に方のアイデアにも通じる部分があります。
ゴブリンの音楽
当初ガスリーニの音楽のみでスタートした本作ですが、急遽アルジェントが起用したゴブリンの音楽をメインにすえることに。
ガスリー二とは?
1929.10.22 –
イタリアのジャズ奏者。
ミラノ生まれ。
幼児期よりピアノを、ミラノ音楽院で作曲を学び、1947年のフローレンス・ジャズ祭には自己のトリオで出場、シンフォニー・オーケストラの指揮者、ピアニストを経て’60年には映画「夜」の音楽を担当した。’63年以降は映画関係の仕事と、自己のカルテットで各地を巡演してイタリアのジャズ普及に貢献したコトバンクより引用
ガスリーニが作った曲を演奏するために呼ばれたチェリー・ファイブは、オリジナル・スコアも担当することになり、メインテーマが作られました。
『サスペリア』リメイク版(2018)
オリジナル『サスペリア』(1977)から約40年を経てつくられた待望のリメイク版。
難解過ぎるなど賛否両論でした。
ここでは【ダリオ・アルジェント】の代表作のリメイクまでの道のりと監督の思いを見ていきましょう。
リメイク版製作までの道のり
リメイク版は当初、新鋭【デヴィッド・ゴードン・グリーン】監督に白羽の矢が立ち企画は動き出しました。
※デヴィッド・ゴードン・グリーンは後に『ハロウィン』『ハロウィン KILLS』『エクソシスト 信じる者』というホラー続編を監督したアメリカ人
ですが、恐怖のオペラ映画として撮りたかったデヴィッド・ゴードン・グリーンに対し、予算がかかり過ぎるとして制作はストップ。
ここで【ルカ・グァダニーノ】の声がかかりますが、一世一代のリメイクに手ごたえが欲しかった彼は、まずは『太陽が知っている』を『胸騒ぎのシチリア』としてリメイク。その後『サスペリア』リメイク版に着手しました。
というようにリメイク版は『サスペリア』(1977)に魅了されてから満を持して取り組んだ作品となりました。
『太陽が知っている』はジャック・ドレーが監督、アラン・ドロンとロミー・シュナイダー、ジェーン・バーキンらが出演した作品。1968年の夏、コート・ダジュールで、天国のような敷地に住む2組のカップルの間で繰り広げられる嫉妬が渦巻くサスペンスドラマ
以上の作品を挙げていますが、『サスペリア』と【ダリオ・アルジェント】は別格だったのでしょう。
『サスペリア』の虜になった少年
イタリアの国営テレビで「サスペリア」を初めて観賞し衝撃を受けた少年は、『サスペリア』の虜になった。「とにかく“もう一度観たい、もっとこの映画について知りたい”という一心で、公立図書館に行き、映画が公開された当時の新聞を探し出して読んだりしたよ」それからすぐに、ルカ少年はこの映画のリメイクを夢見るようになった。
彼はノートに、<『サスペリア』監督:ルカ・グァダニーノ、ダリオ監督の映画から着想>と書き記した。「自分ならどんな『サスペリア』を作るかを考えはじめたんだ」こうして幼いころから映画化を夢見てきた作品をついに作りあげる時が来た。
子供心に、畏怖の念を抱き、多大なインスピレーションを得てきた映画に、心から敬意を示すため、これまでの監督作で最も高い評価を受けアカデミー賞作品賞候補にもなった『君の名前で僕を呼んで』に続く作品として、ルカ・グァダニーノは『サスペリア』を選んだのだった
公式サイトより引用
ジェシカ・ハーパー 出演
ファンにとっては、『サスペリア』(1977)の主演ジェシカ・ハーパー が出演したのは嬉しいシーンでした。
実は多方面で活躍していた彼女は『マイノリティ・リポート』(2002)にも出演しているほか、 ブライアン・デ・パルマ監督の『ファントム・オブ・パラダイス』(1974年)ウディ・アレン監督の2本『ウディ・アレンの愛と死』(1975年)と 『スターダスト・メモリー』(1980年)に出演。
子供向けの絵本を出版したり、音楽アルバム「Inside Out」と「Rhythm In My Shoes」をプロデュースしたりと様々な活躍をしました。
今作の出演の際には、ドイツ語を猛勉強して臨んだとか。この時彼女は69歳で語学の勉強は凄い。
音楽:トム・ヨーク (レディオヘッド)
ゴブリン作の音楽では【ダリオ・アルジェント】の映像と共鳴するように、恐怖心を煽るようなアレンジが施され、禍々しい世界に引きずり込まれましたが、トム・ヨークは混沌としながらも哀愁を含んだピアノがフューチャーされています。
オープニングのタイトル・バックで『Suspirium』が流れると、彼独特のメランコリーなメロディは様々な感情を与えてくれます。またトム・ヨークは今作を1つのアルバムとして発表しましたが、多くの楽曲は映画で使用されたそうです。
レディオヘッドの『Kid A』は本当によく聞きましたが、思えばこのアルバムからトム・ヨークが鍵盤を使った弾き語りを始めたんですよね。
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俳優としての【ダリオ・アルジェント】
【ダリオ・アルジェント】にまつわる作品を紹介してきましたが、最後に俳優【ダリオ・アルジェント】主演作を紹介します。
『VORTEX ヴォルテックス』(2023)
あらすじ
映画評論家である夫と元精神科医で認知症を患う妻。 離れて暮らす息子は2人を心配しながらも、家を訪れ金を無心する。 心臓に持病を抱える夫は、日に日に重くなる妻の認知症に悩まされ、やがて、日常生活に支障をきたすようになる。 そして、ふたりに人生最期の時が近づいていた…。
『VORTEX』公式サイトより引用
現在84歳のアルジェントですが、本作の撮影時にはすでに80歳を超えていたそう。過去には自らの作品でナレーターや犯人の、“手”として出演したこともありますが、主演はもちろん、本格的な演技に挑戦すること自体が今作が初めて。
さらに撮影現場ではフランス語で演技をこなさなければならず、妻役のフランソワーズ・ルブランや息子役のアレックス・ルッツと即興演技で進めていくことも多く、苦労の連続だったそうです。
新たな挑戦のきっかけとなったのは、かねてから親交のあったギャスパーノエ監督からの直々のオファーがあった為
「ある時、彼は私のためにこの映画を書いたのだと言って出演を懇願してきました。その後、ギャスパーがローマまで会いにきてくれた際、彼の『LOVE 3D』を朝10時から観ました。その時は正直に言って、大きな疑問を感じました。彼は私になにをさせる気なのだろうかと。だが、最終的に娘のアーシアが私を説得してくれました。私は自分の意志のすべてを、体力のすべてを、そして自分の存在のすべてをこの作品に注ぎ込みました」。
とはいえ二度とやりたくはないとも言ってましたがね(笑)
まとめ
この記事ではマリオ・バーヴァの後継者【ダリオ・アルジェント編】と題して、初期三部作の紹介と今日への影響なども解説してきました。
彼の作品は視覚的に頭に残る作品が多く、第一線で活躍している監督のなかでもファンも多く存在します。マリオ・バーヴァと並んで現代ホラーやサスペンス表現の原型を作った方なので、掘り下げていくと楽しいです。
『サスペリア』(1977)と『サスペリア』リメイク版(2018)を見比べるのも楽しいので、興味持ったら一度は観ることをおススメします。
この記事を読んだ方の映画ライフが充実することを願って。
ではまた
動物三部作の全作品を配信で見ることは出来ませんが【ゲオの宅配レンタル】などの宅配レンタルをすることが出来ます。
参考資料
・Wikipediaのページ
・Filmarksのページ
・The Guardianの記事
・MOVIE WALKER PRESSのページ
・別冊映画秘宝『サスペリアMAGAZINE』
・『イタリアン・ホラーの密かな愉しみ―血ぬられたハッタリの美学』:フィルムアート社
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