この記事では、ライブでも人気の曲『Parallel Universe』を掘り下げます。
アルバム『Californication 』では『Around the World』に続き2曲目に収録。
『Parallel Universe』はギターもベースもシングルノートで16分音符で進みます。楽器もドラムとギター、ベースのみというスカスカなのに研ぎ澄まされた音。
音の運び方が違うので合わさった時の和音の響きが独特です。
※当時はエアロスミスや、ボンジョヴィなどをよく聞いていたので音少なさにびっくりしたのを覚えています。
また、ジョンのギターソロは宇宙の始まりのようなエネルギーに満ちています。
下の映像 SLANE CASTLE(2003年)のライブでのジョンのソロは一聴の価値があります。
※4分40秒あたりからジョンのソロです。
直訳すると『Parallel Universe』=並行宇宙
演奏自体も魅力的ですが、今回は『Parallel Universe』の奥深い歌詞に迫っていきます。
歌詞の解釈は人それぞれですし、本当の意味は作詞をした人しか分かりません。
もしよかったら一つの解釈として読んで頂けると嬉しいです。
彼らの近況をまとめた記事はこちら
『Parallel Universe』lyric
[Verse 1]
Deep inside of a parallel universe
It’s getting harder and harder to tell what came first, um
Underwater where thoughts
can breathe easily Far away you were made in a sea, just like me
[Chorus]
Christ, I’m a sidewinder, I’m a California King I swear it’s everywhere, oh, it’s everything
[Verse 2]
Staring straight up into the sky, oh, my, my
A solar system that fits in your eye, microcosm
You could die but you’re never dead, spider web
Take a look at the stars in your head, fields of space kid
[Chorus]
Christ, I’m a sidewinder, I’m a California King
I swear it’s everywhere, oh, it’s everything
Christ, I’m a sidewinder, I’m a California King
I swear it’s everywhere, oh, it’s everything
[Instrumental Break]
[Verse 3]
Psychic changes are born in your heart, entertain
A nervous breakthrough that makes us the same, bless your heart, girl
Kill the pressure it’s raining on salty cheeks
When you hear the beloved song, I am with you
[Chorus]
Christ, I’m a sidewinder, I’m a California King
I swear it’s everywhere, oh, it’s everything
Christ, I’m a sidewinder, I’m a California King
I swear it’s everywhere, oh, it’s everything
[Instrumental Outro]
『Parallel Universe』歌詞の和訳
[Verse 1]
並行宇宙の奥深く
何が先に起こったのか、ますますわからなくなってきている
深海は簡単に思考が生まれる場所さ
遠く彼方の海で、君は生みだされた 俺と同じように
[Chorus]
キリストよ 俺はサイドワインダー 俺はカリフォルニアキング
誓うぜ いたるところにあって すべてなんだ
[Verse 2]
まっすぐ空を見上げて 目を凝らす
太陽系も小宇宙も瞳にピッタリ収まる
君は死ぬかもしれない でも蜘蛛の巣に絡まったように 君の死を消すことは出来ない
君の頭の中の星を見てごらん 宇宙のはじまりの原野が広がる
[Chorus]
キリストよ 俺はサイドワインダー 俺はカリフォルニアキング
誓うぜ いたるところいて すべてなんだ
キリストよ 俺はサイドワインダー 俺はカリフォルニアキング
誓うぜ いたるところにあって すべてなんだ
[Instrumental Break]
[Verse 3]
君の心の中で サイケデリックな変化が生まれ 楽しませる
俺たちを縛り付ける 神経的つながりを突破して 共通の体験を与え楽しませる あなたの心にも祝福を
塩辛い頬に降りそそぐ プレッシャーは消し去るんだ
愛すべき歌が聴こえたら 俺が君と共にいる
[Chorus]
キリストよ 俺はサイドワインダー 俺はカリフォルニアキング
誓うぜ いたるところにあって すべてなんだ
キリストよ 俺はサイドワインダー 俺はカリフォルニキング
誓うぜ いたるところいて すべてなんだ
[Instrumental Outro]
『Parallel Universe』の深読み
水泳選手アンソニー・アービン
アンソニー・アービンは2000年19歳の時に男子50m 自由形で優勝した選手です。
彼はカルフォルニア州出身、アフリカ系アメリカ人(白人と黒人のハーフ)で初の金メダリストとなり、一躍時の人となります。
しかし、アンソニー・アービンは人種に関することばかり注目されるのが嫌だったようです。
また、若くして有名人になってしまった事でプレッシャーもあり、泳ぐことに対して”楽しさ”を見いだせなくなってしまいます。
彼はシドニーオリンピック後から薬物依存やアルコール中毒に苦しみ、競技から離れ、一時期は自殺も考えるほどであったという。
競技休止後はバンドで演奏をしたり、世界中を旅したりしてましたが、2012年に競技にカムバック。
同年開催のロンドンオリンピックで12年ぶりに31歳で出場し、50m自由形で5位に入賞している。
また、2016年リオデジャネイロオリンピックに出場し、競泳50m自由形で金メダルを獲得した。
90 年代から活躍していたアンソニー・アービンが、名声や世間の目から逃れて唯一平穏を得られるのは、水中に潜っている時だったのでしょう。
歌詞の
『深海は簡単に思考が生まれる場所さ』
『遠く彼方の海で、君は生みだされた 俺と同じように』
は、人類の起源が海から始まったように、水中という場所は、すべての物事から解き放たれ、魂に帰れる場所とも取れるのではないでしょうか。
これは、肉体という物質そのものが、真の精神的自由を妨げているという曲のテーマに、繋がっていきます。
アンソニー・アービンのカムバックはジョンと重なる部分もあります。
サイドワインダーとは?カリフォルニアキングとは?
[Chorus]に出てくる
【サイドワインダー】と【カリフォルニアキング】は、カリフォルニアに生息する2種類のヘビです。
【サイドワインダー】はアメリカ西部に生息するヨコバイガラガラヘビ(Crotalus cerastes)の通称。このヘビはまっすぐ進めず、横に滑るように移動することからサイドワインダーと呼ばれました。
この事から、まっとうな道を歩むことができない人間、社会の規範に従わない人間、信用できない危険人物を指してサイドワインダーと呼ばれるそうです。
また【サイドワインダー】ヨコバイガラガラヘビヘビは毒を持っています。
一方【カリフォルニアキングスネーク】は、ガラガラヘビの毒に対して自然な耐性を持っています
歌詞の
『俺はサイドワインダー』
『俺はカリフォルニアキング』
つまり2匹の蛇は自分自身が毒、つまり麻薬でむしばまれていること。社会の規範に従わない人間であることを比喩しています。
続く
『誓うぜ いたるところにあって すべてのなんだ』
は、カルフォルニアの華やかな成功という、表の部分ではなくその裏側にある麻薬、暴力、性犯罪、極端な虚栄心などの『Californication』はいたるところにあるという怒りと悲しみが込められています。
また毒はヘビの体のいたるところ血液にも存在します。
これはアンソニーがカリフォルニアとドラッグとの断ち切れない関係について日々感じていることです。
ある意味 LA の血液と呼べるほど蔓延しているドラックの恐ろしさは、『Californication』のテーマに繋がります。
蜘蛛の巣
[Verse 2]の【蜘蛛の巣】の意味は【宇宙の網】の事。
【宇宙の網=Cosmic Web】?
そんなの馬鹿げてると思われるかもしれませんが、宇宙の網は以前から研究されていました。
まずは、宇宙のウェブとはいったい何なのか、ということを考えてみましょう。簡単に言うと、宇宙にあるすべての銀河と、それらを結びつけるウェブのような糸で形成された広大なネットワークです。目に見えない水素ガスのフィラメントで構成されたこれらの銀河間のつながりは、宇宙の通常の物質の大部分を構成し、暗黒物質の分布も追跡しています。
滅茶苦茶ざっくり言うと宇宙はすべて網目のように繋がっているという事です。
このCosmic Webを生と死に置き換えると、全てがつながっており相互的に意味のあることとなります
誰かが亡くなっても、忘れ去られるわけではありません。誰かがその人のことや、その人の残したものを覚えているからです。
人を構成する原子や記憶は、「蜘蛛の巣」つまり無限の宇宙の中に永遠に閉じ込められます。
また、蜘蛛の巣は蜘蛛が去った後も存在し続けます。
アンソニーはすべての罪も成功も失敗も感情さえ人類という存在がいる限り、永遠に人の記憶に残り続けると歌っています。
また、Cosmic Webはすべてを暗闇へと飲み込むダークマターと、銀河系は繋がっている事を証明しているそうです。
この事からダークマター=負のエネルギーさえも、つながりがあり時には必要な事と言っている気がします。
神経のネットワーク
『君の頭の中の星を見てごらん 宇宙のはじまりの原野が広がる』
空に浮かぶ星雲、銀河、恒星、惑星などが絡み合ったCosmic Webと、脳内のネットワークを同じものとし、宇宙の始まりが広がっていると歌います。
またCosmic Webはニューロンシステム(神経同士の繋がり)をも意味しています。言い換えれば、望遠鏡を通して見る銀河系や、惑星は脳内のネットワークや複雑なニューロンシステムと全く同じであり、すべて同じ美しい宇宙の一部なのです。
悲惨な出来事の意味するものとは?
『俺たちを縛り付ける神経的つながりを突破して 共通の体験を与え楽しませる あなたの心にも祝福を』
人生で最も悲惨な試練を体験し、すべての出来事に繋がりがあったとしても、そのつながりを突破することで、最終的には心に祝福を与える瞬間があると伝えているのです。
すべては心の中にある
『愛すべき歌が聴こえたら 俺が君と共にいる』
『Parallel Universe』は宇宙や物事、生きとし生ける物は全て繋がっており互いに作用しあっている。
それは時に悲劇を引き起こすけど、いつか必ず突破することができる。
やがて肉体は失われても、愛すべき歌が聴こえるだけで、心の中にいることを感じることが出来る。
精神的には彼女と一緒にいるのです。
『Parallel Universe』の逸話
『Parallel Universe』はラジオ用にシングルカットされた曲です
シングルカットと言っても、ラジオ用だったのでシングルリリースはされていません。
ですがライブでもよく演奏されますし、ベストアルバムにも収録されてるので彼らのお気に入り曲でしょう。
『Parallel Universe』のデモ
『Parallel Universe』にはデモ版も存在し、シングルの『Around the World』のBサイドに収録されています。
デモ版は曲の構成が違って、[Verse 1][Verse2][Chorus]という順番だったり、ベースの音の運び方が違います。
また[Chorus]のドラムも大分違いました。
大まかな曲の骨格は出来ていますが、リリース版は鋭く研ぎ澄まされソリットになっています。
引き算のギター
ジョンが参加したアルバム『Blood Sugar Sex Magik 』は音色も違いますが、コードのバッキングが多いです。
それに比べ『Californication』はコードより、シングルノートが多くギターソロも複雑ではありません。
これには理由があります。
『Californication』で復帰する前、ジョンは1992年の来日公演中に脱退し、ヘロイン中毒とうつ病に苦しみました。
当時、ジョンはギターをドラッグを買う為に売ってしまうほど、ドラッグにはまっていたようです。
その間ギターをずっと弾いておらず、手も以前のようには動かなかったでしょう。
※その後リハビリ施設で一緒になったデイヴ・ナヴァロが、お金のないジョンにギターを貸している。
やがて薬物中毒を克服し1998年バンドに復帰します。
しかし、以前のようにプレイをすることはすぐには出来ず、シンプルなプレイが多くなったようです。
『Californication』はジョンのリハビリアルバムだったのです。
シンプルなプレイをしても引き算のギターと絶賛されるのが、ジョンの凄さでもありバンドの新たな個性となりました。
楽器をしている人はわかるかもしれませんが、バンドの中で音色も派手にせず、シングルノートって怖いところがあるんです。
まるで、まる裸みたいなものですからね。
まとめ
『Parallel Universe』の深堀りはいかがだったでしょうか?
宇宙や精神や心といった内容で、新興宗教臭いところもあり退屈だったかもしれません。
また、宇宙関連には詳しくないので、情報が間違っているかもしれませんので、その際はコメントいただけるとありがたいです。
ですが『Parallel Universe』を解説しているブログはあまりなかったので、私自身は書いてよかったと思っています。
このブログでは今後も音楽(レッチリが多い)や映画の事を深堀りしていきます。
音楽や映画の新たな魅力を発見していただけると嬉しいです。
ではまた
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