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『ジャッロ映画名作紹介』ホラー映画の源泉【マリオ・バーヴァ編】 

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皆さんはホラー映画の名作といえば、どんな作品が思い浮かぶでしょうか?

現代の作品だと『マリグナント 狂暴な悪夢』『ミッドサマー』、『ゲット・アウト』など。

往年の作品だと「13日の金曜日」シリーズや「エルム街の悪夢」などなど。

とはいえそれらの作品にも、下敷きがあります。

それがジャッロ映画というジャンル。

簡単に言うと、ジャッロ映画は60年代70年代に流行ったイタリアのホラー映画の事を指します。

やがてジャッロ映画は形を変え現代のホラー映画の基礎を作りました。

その中でも巨匠と言えるのが、今回紹介する【マリオ・バーヴァ】です。

この記事では現代ホラー映画の父ともいえる【マリオ・バーヴァ】の作品とジャッロ映画についてまとめていきます。

マリオ・バーヴァ】の作品は、巨匠マーティン・スコセッシギレルモ・デルトロも影響を受けたと公言している作品もあるので、普段ホラー映画を見ない方でも楽しめる内容だと思います。

マリオ・バーヴァ】・・?

そんなのホラー好きなら常識だよ!!

という方はごめんなさい。

以前にジャッロ映画については記事にしましたが、今回は【マリオ・バーヴァ】という作家によりフォーカスを当てていきます。

知らなかった。という方はジャッロ映画と【マリオ・バーヴァ】という名前を覚えていってくださいね。

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ジャッロ映画をおさらい

そもそもジャッロとはイタリア語で黄色と言う意味です。

ジャッロとは平たく言うと、アメリカのパルプフィクション(安価な雑誌に掲載された、読み捨てを前提とした短編小説)のイタリア版。

※ジャッロの由来は、これらの本の背表紙が黄色だったことに由来する

ジャッロ映画とはイタリアの映画だったんです。

さらにイタリアでは、ミステリのことをジャッロ(Giallo)とも言います。つまり、イタリアではシャーロック・ホームズアガサ・クリスティもジャッロになります(笑)

ジャッロ映画の始まりは1960年代、このジャッロ小説の映画化から始まりました。

次第にジャッロ映画というジャンルが確立していきます。

ジャッロ映画の特徴3選

ジャッロ映画には大きく3つの特徴があります。

  1. 残虐な描写
  2. 黄色や赤を多用した映像
  3. 斬新なカメラワーク

中でも斬新なカメラワークは、ホラー作品だけでなく、スリラー映画。監督ではクエンティン・タランティーノブライアン・デ・パルマにも大きな影響を与えたようです。

巨匠マリオ・バーヴァを知る

ジャッロ映画の中でも初期から活躍し、のちの映画界に影響を与えたのが巨匠マリオ・バーヴァです。

まさにホラー映画の基礎を作ったともいえる人物です。

ですが、実はホラー作品だけにとどまらないのが、マリオ・バーヴァの面白いところ。

アクション、史劇、SF、西部劇と多趣味なお方です(笑)

ここではマリオ・バーヴァが後の作品にどんな影響を与えたか、ホラー代表作の5作品に絞って紹介しながら解説していきます。

  1. 『呪いの館』(1966年)
  2. 『血みどろの入江』(1971年)
  3. モデル連続殺人!』(1963年)
  4. 知りすぎた少女』(1963年)
  5. 『バンパイアの惑星(1965年)

マリオ・バーヴァ作品はアマプラで観れない作品もありますが、U-NEXTであればほぼ観ることが出来ます。

初回30日間は無料なので、是非覗いてみてください。

『呪いの館』(1966年)

あらすじ

イタリアの片田舎。グラップス男爵夫人、(G・ビバルディ)の女中イリナが、自分の町で行われつつある連続殺人を警察署長宛に手紙を送ったことが、この奇怪な事件の発端だった。派遣されたクルーガー警部(P・ルリ)がこの町に到着する前に、イリナは不可解な死をとげていた。

                        MOVIE WALKER PRESSから引用

レビュー

蜘蛛の巣や肖像画、霧、暗い通路や、螺旋階段まさにゴシックホラーのお手本のような作品。赤・緑・青といった原色を活用したジャッロ映画らしい世界観を構築している。

映画に対して深い知見はありませんが、照明の当て方、かなり寄ったカメラによるキャラクターのアップで不安感を煽るなど、現代の作品への影響も大きいと思います。

現代への影響

『呪いの館』スコセッシ監督やタランティーノ監督、大林宣彦監督がベストな作品と公言する心霊映画の元祖。

マリオ・バーヴァの原色を使った色彩や、照明(影の付け方)など、不穏な雰囲気はホラー映画の原点と言っても良いでしょう。

映画好きなら一度は見たい作品です。

『血みどろの入江』(1971年)

 予告がなかったのでオープニングシーンです。

あらすじ

ある資産家の入江で次々と人々が惨殺されていくスプラッター作品の元祖。

冒頭はスラッシャー映画よろしく若者が殺されたりしますが、徐々に相続問題などの人間ドラマが繰り広げられます。

レビュー

バーヴァ監督作品としては後期の作品。

何者かに登場人物が次々と無残に殺されるという「13日の金曜日」の元ネタなのは有名な話。

顔面に食い込む斧や、若いカップルが行為の最中にベットごと串刺しにされたり。もしかしてホラーを見慣れた方にはインパクトはないかも知れません。

ですが、これらの原型を作った作品と言われれば、見ないわけには行けませんよね(笑)

現代への影響

『血みどろの入江』は現代というより少し前のスラッシャー映画に、大きな影響を与えています。というよりそのままやん(笑)

特に殺人シーンのアイデアや若者が犠牲になる暗黙のルールなどは、「13日の金曜日」「エルム街の悪夢」など80年代の作品引き継がれています。

血液の色や吹き出し方、カメラワークなど技術面でも参考にした部分は大きいでしょう。

なにより80年代のホラー映画で育った方は、懐かしい気分になるかもしれません。

※当時はレンタルしてきたホラー映画を、家庭で見ていたお子さんも多かったのではないでしょうか。

モデル連続殺人!』(1963年)

あらすじ

ファッション・モデルの女が仮面の男に惨殺された。ただちに捜査が開始されたが、犯人内部説が濃く、モデル達が訊問をうけたが、臭いとみられた人物にもアリバイが成立した。翌日、殺されたモデルの日記帳が、デザイナー、モラルキ(キャメロン・ミッチェル)の館でのショウの控室で発見された。

                         キネマ旬報webより引用

レビュー

電話の受話器が垂れ下がっている構図。最近はスマホだから見ないけど受話器が赤いのは何ともスタイリッシュ。さすがイタリアです(笑)

見どころはマリオ・バーヴァらしい凝ったカメラワーク。

ダリオ・アルジェントの「サスペリア」も大いに参考にしたであろうおしゃれな小道具。さすがイタリア映画(2回目)

まさにザ・ジャッロ映画です。

現代への影響

この作品も現代と言うより、『サスペリア』への影響が大きいと思います。

そのダリオ・アルジェントに影響を受けた『マリグナント 狂暴な悪夢』ジェームズ・ワンや『ラストナイト・イン・ソーホー』のエドガーライトに意思は受け継がれたといったところでしょう。

知りすぎた少女』(1963年)

あらすじ

20歳のアメリカ娘ノーラは、ローマに住む叔母に会いに行くため、ローマ行きの飛行機に乗る。その機内でノーラは、偶然隣り合わせた男からタバコをもらう。だが、それは実はマリファナで、男は空港内で麻薬所持で逮捕された。

何とか難を逃れたノーラは叔母と対面するが、叔母は間もなく急死してしまう。ノーラは叔母の友人だったというラウラ夫人のもとに身を寄せる。

ある夜、ノーラは街中で女性が刺殺されるのを目撃する。だが、彼女以外に目撃者がおらず、証拠も残っていないため、幻覚として真面目に受けとってもらえない。

その後も、ノーラの周囲では殺人が次々に起きる。彼女はすべてがマリファナを吸ったことによる幻覚ではないかと疑い始めるが、空港で知り合ったマルチェロ医師の協力を得て調べを進める。

その結果、彼女が目撃した一連の殺人は、10年前に起きた連続殺人事件と全く同じ手口であることが分かる。

                                              Wikipediaより引用

レビュー

相変わらず影の付け方が上手いバーヴァ先生。

上品な雰囲気でヒッチコックを思わせることも・・多分ヒッチコックを参考にしたはず。

知りすぎた少女』(1963年)はジャッロ映画の初期の作品。『サイコ』は1960年を参考に演出方法を模索していた時期なのでは?

このように作品や作家の影響を調べたり、妄想するのは楽しいです。

現代への影響

『知りすぎた少女』もダリオ・アルジェント監督サスペリア2に大きな影響を与えたと思われます。

  1. 水たまりや鏡に人物がうつり込むシーン
  2. 裸電球が揺れて影が揺れて、顔に影と光がうつり込むことによって、主人公の不安感が強調されるシーン。
  3. 土葬されるシーン
  4. 包丁で背中を刺されるシーン
  5. すりガラス越しに犯人が映り込むシーン。

などはどれもが「知りすぎた少女」とサスペリア2の両方に出てきます。

「知りすぎた少女」
「サスペリア2」『マリグナント 狂暴な悪夢』➡『・・・・』というように今後も脈々と受け継がれていくことでしょう。

バンパイアの惑星』(1965年)

あらすじ

物語は、謎の通信を発信している惑星アウラに向かう二隻の宇宙船、アルゴス号とガリオット号から始まる。

ガリオット号が先に到着しますが通信が途絶えます。その後アルゴス号は到着時に制御不能に陥りますが、マーク船長がなんとか事態を収拾します。

惑星アウラの表面は薄い霧に覆われており、調査チームはガリオット号の乗組員が全員死亡しているのを発見。

宇宙船の乗組員は互いに殺し合い、死んだ人間は墓場から蘇る彼らは、この惑星の実態のない何者かに操られているらしい。

レビュー

謎の信号を発信している惑星に調査に向かうプロットや、先発チームが全滅している理由を探っていく➡惑星からの脱出なんてもろ「エイリアン」やん。

このプロットに対して監督リドリースコットも脚本家ダンオバノンも否定してるようですが・・・

※ダンオバノンは「エイリアン」「バタリアン」「トータルリコール」などに携わった脚本家です

予算ないだろうにマリオ・バーヴァ監督SFも撮ったの?

とびっくりしたけど、これも挑戦だったんだろうなと・・しみじみ。

宇宙xホラーという組み合わせは今作が初では?

※もし違ったらごめんなさい・・

ダンオノバンの成功

脚本家ダン・オバノンがこの映画を見て影響を受けたのが『エイリアン』なんだけど、公開当時受け入れられるか不安で家に閉じこもっていたらしい。

『エイリアン』や『バタリアン』のコメンタリーなどによると、当初ハリウッドへ来たのは監督になる為だったが、監督になる前に編集を覚えろ、脚本を書いてみろと言われたところ、最初に芽が出たのが『エイリアン』の脚本だった。自身で監督をやりたかったが、リドリー・スコットの手腕に感服したという。『エイリアン』公開時は恐怖のあまり自宅に引きこもっていたところを呼び出され、行列や拍手喝采の状況を見て涙が止まらなかったと語っている。

                              Wikipediaより引用

いい話だよ。

こういう先駆者の挑戦が、今の映画界を支えている。

ホラー映画の先駆者【マリオ・バーヴァ】

これら作品でわかるのは、マリオ・バーヴァの挑戦とその先駆者ぶり。

  1. 『呪いの館』は、巨匠スコセッシ達へのへ影響
  2. 『血みどろの入江』は、スプラッター・ホラーの原型
  3. 『モデル連続殺人!』はシリアルキラー作品
  4. 『知りすぎた少女』は、ジャッロ映画の原点
  5. バンパイアの惑星はまんま『エイリアン』

さらにその影響は次の作品に繋がっていく。

ホラー映画において大樹と言っていい存在が【マリオ・バーヴァ】なのだ。

しかし、日本における【マリオ・バーヴァ】やジャッロ映画の知名度はまだまだ低い。

現在は動画配信サービスやDVDで、手軽にマリオ・バーヴァの作品を観ることが出来ます。

今回紹介した作品以外にも【マリオ・バーヴァ】作品は多くあります。

ホラー好きの人は当然として、ホラーは苦手という人も、【マリオ・バーヴァ】の独特な世界を映画好きなら一度は味わって欲しいと思います。

現代映画の中にあるジャッロ映画

現代のジャッロ映画系譜と言っても、ジャッロ映画自体は1970年代が最盛期。

現代への影響という点では、今は第三,第四世代と言えると思います。

例えば『血みどろの入江』➡『13日の金曜日』『エルム街の悪夢』や『スクリーム』『ハッピー・デス・デイ』

スラッシャー映画からキャラクターものになり、メタ的要素、青春ものが加わりタイムループにたどりつくみたいな。

他の作品『呪いの館』もJホラーにつながったりしてる。でも、元をたどるとすべてはマリオ・バーヴァ作品に繋がるみたいな感じですかね。

そんな中で『ラストナイトインソーホー』や『マリグナント 狂暴な悪夢』のようにジャッロ映画を強く意識した作品が現代に生まれ評価されたことは、ジャッロ映画にスポットライトを当てることに繋がりました。

※これらはジャッロ映画アクションジャッロ映画タイムスリップというように各監督のオリジナリティが発揮されている点も面白い

そして『X エックス』タイ・ウェスト監督のように、古典的なホラー映画の要素を現代的に解釈するという監督も現れました。

今後もホラー映画は進化していくとは思いますが、根底にはジャッロ映画が脈打っているのです。

まとめ

この記事ではジャッロ映画の解説と、巨匠マリオ・バーヴァの作品を5作品紹介しました。

何度も言うように、現代のホラー映画で直接的なジャッロ映画と呼べる作品はありませんが、その精神は今も受け継がれています。

もし映画を見ていく中で、ジャッロ映画というジャンルに行きついたら、ぜひマリオ・バーヴァの作品を見てみてください。

その中には思わず、ニヤッとするシーンがあるはずです。

この記事を読んだ方の映画ライフが充実することを願って。

ではまた

参考資料

Wikipediaのページ

Filmarksのページ

キネマ旬報のページ

COLLIDERのページ

MOVIE WALKER PRESSのページ

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